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抗日映画と噂された歴史超大作がついに日本公開!

日本統治下の台湾で起きた大量殺戮事件の真相! 異文化との軋轢が呼んだ悲劇『セデック・バレ』

SeediqBale2.jpgウェイ・ダーション監督。「戦闘シーンの撮影は入れ込んでいたので、
怖いとは感じなかった。午前の撮影が終わった後、崖崩れが起きてゾッとした(苦笑)」
と山岳地帯での困難な撮影を振り返った。

ウェイ・ダーション 日本統治時代に起きた山岳民族と日本側との戦いを描いた作品ですが、私が描きたかったのは戦いや憎しみそのものではありません。私がこの作品を撮ることで確かめたかったことは、なぜ憎しみが生まれたのかということです。その原因を検証するために『セデック・バレ』を作りました。そして、みなさんと一緒に考えたいんです。どうすれば憎しみ合うことなく、平和に生きていけるか。実は『セデック・バレ』には2つのバージョンがあります。台湾で公開した4時間36分の完全版と、もっと短くしたインターナショナル版です。インターナショナル版は海外で上映するために短く編集したものですが、これは正直なところ評判がよくありません(苦笑)。日本のみなさんには、ぜひ完全版を観てほしいと願っていました。上映時間が長いことから、なかなか日本での配給先が決まりませんでしたが、私のデビュー作『海角七号/君想う、国境の南』(08)を日本で公開してくれた会社が『セデック・バレ』も公開してくれることになったんです。

 「霧社事件」は80年以上前に台湾の山岳地帯で起きた事件だが、『セデック・バレ』は決して過去の悲劇を描いた作品ではない。文化、信仰、価値観の違いから人類は繰り返し、多くの血を流してきた。『アバター』の下敷きとなった新大陸開拓時代から、9.11同時多発テロとそれに続く米軍によるアフガニスタン爆撃とイラク戦争……。今なお、この世界から争いの火が消えることはない。『セデック・バレ』は現在進行形の問題を扱った作品といえる。

ウェイ 確かにその通りです。文化とは、もとからあったものではありません。人間がその土地で生存していくためにあれこれと試行錯誤していく過程の中で自然と形づくられてきたものだと僕は考えています。ですから異文化と接する場合、その土地に根づいた文化を尊重する気持ちを持つことが大事ではないでしょうか。それをせずに「自分たちの文化のほうが優れている」「お前たちの文化は劣っている」と決めつけていては、いつまでも平和が訪れることはありません。大陸から移ってきた漢民族である僕が古くから台湾で暮らしていた原住民・セデック族に興味を持ったのは、彼らが極めてシンプルな価値観を持っていたという点です。抑圧された人々が自分たちの信じる信仰のために立ち上がるというのは当然なことですが、僕は抗争そのものよりも、彼らが信じたシンプルな価値観とは何かということに興味があったんです。

 残酷な首狩りシーンをはじめ、バイオレンス描写満載のアクション大作を撮ったとは思えない物腰の柔らかなウェイ監督。彼が「霧社事件」の映画化を思い立ったのは、1997年にチウ・ルオロンによる漫画『霧社事件−台湾先住民、日本軍への魂の闘い−』を読んだことがきっかけ。漫画を読み終わり、血がたぎるような思いに駆られたそうだ。だが、実際に映画の製作準備のために事件を調べていくうちに考え方が変わっていった。

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