日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 日本統治下の台湾で起きた大量殺戮事件の真相! 異文化との軋轢が呼んだ悲劇『セデック・バレ』
抗日映画と噂された歴史超大作がついに日本公開!

日本統治下の台湾で起きた大量殺戮事件の真相! 異文化との軋轢が呼んだ悲劇『セデック・バレ』

SeediqBale4.jpg自然と共生する原住民たちの文化に理解を示していた小島巡査(安藤政信)。
民族間の対立に巻き込まれ、非情の決断を強いられる。

 現在、原住民たちの90%以上がキリスト教信者とのこと。日本統治の末期から中国大陸から来た国民党が台湾を統治するまでの空白期間、原住民たちの生活は非常に苦しかったそうだ。その間、キリスト教の教会が医療品や食料を無料で提供し、教会の援助によって新しい生活基盤が築かれていった。そのためキリスト教を信仰するようになった原住民が多いという。キリスト教と原住民との関係は『セデック・バレ』では描かれないものの、文化と信仰の関係についてのウェイ監督の見解は興味深い。安藤政信、木村祐一ら日本人キャストをどのようにして決めたのかも聞いてみた。

ウェイ 当時の記録に残っている日本人は、みんな悪人としてしか書かれていません。ですから、あえてパッと見では悪人に見えない人たちにお願いしました。小島役を演じた安藤さんは特にそうですね。小島は「霧社事件」の後にも原住民たちの仲間割れを画策し、「第2次霧社事件」を起こした悪人として知られています。でも本当に根っからの悪人だったのでしょうか。調べていくと、小島は原住民たちの言葉を覚え、原住民たちの伝統や信仰を理解し、家族を日本から呼んで一緒に暮らしていたことが分かりました。察するに、とても善良な警察官だったようです。それが霧社事件で妻と子どもを失い、真逆な方へと振れていったのです。霧社事件の複雑さを表す非常に難しい役を安藤さんには演じてもらいました。日本ではお笑いタレントとして人気のある木村祐一さんも同じ理由です。「この人は悪い人? それとも良い人?」と一見しただけでは分からない雰囲気を持つ日本の方たちに参加してもらったんです。

 台湾映画界のアカデミー賞である「台湾金馬奨」ではグランプリをはじめ6冠を受賞し、メガヒットを記録した『セデック・バレ』。中国でも劇場公開されているが、大陸側の反応はどうだったのか?

ウェイ 中国大陸では上映時間の短いインターナショナル版の上映だったので、ちゃんと理解してもらえるか心配でした。でも上映に集まってくれた向こうの知識階級の方たちは、すでに出回っていたロングバージョンの海賊版DVDを観た上で来てくれた方たちが多かったようです(笑)。もちろんアクションシーンで盛り上がったお客さんもいたとは思いますが、ほとんどの方たちは作品のテーマを理解し、好意的に受け止めてくれていました。中国大陸の人たちは「これは抗日映画、反日映画ではない」と言ってくれました。ただ憎しみ合うのではなく、いかに憎しみを抑え、平和に生きていくことが大事かを共に考えてくれたように思います。日本のみなさんも、ぜひ完全版をご覧になってください。

 前作『海角七号/君想う、国境の南』でも台湾と日本との親密な関係を描いたウェイ監督。プロデューサーを務めた最新作『KANO』は甲子園で準優勝を遂げた台湾球児たちのドラマで、こちらも日本での公開を目指している。
(取材・文=長野辰次)

SeediqBale5.jpg
『セデック・バレ 第一部 太陽旗/第二部 虹の橋』
製作/ジョン・ウー、テレンス・チャン、ホァン・ジーミン 監督・脚本/ウェイ・ダーション プロダクションデザイン/種田陽平 出演/リン・チンタイ、ダーチン、安藤政信、ビビアン・スー 提供/マクザス 配給/太秦 4月20日(土)より渋谷ユーロスペース、吉祥寺バウスシアターほか全国順次ロードショー
(c)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production ALL RIGHTS RESERVED. 
<http://www.u-picc.com/seediqbale>

●ウェイ・ダーション
1969年台南市生まれ。林海象監督の『海ほおずき』(96)、エドワード・ヤン監督の『カップルズ』(96)などにスタッフとして参加。97年より『セデック・バレ』の脚本づくりに取り掛かる。だが、膨大な予算が必要なため、製作は難航。そこで1500万円の予算で恋愛映画『海角七号/君想う、国境の南』(08)を監督し、これが台湾映画史上最大のヒット作に。『海角七号』の成功で出資が集まった。台湾映画史最高額となる20億円を投じ、2009年10月~2010年9月にわたって『セデック・バレ』を撮影。2011年にベネチア映画祭でワールドプレミア上映が行われた。プロデューサーを務めた最新作『KANO』は甲子園で準優勝を遂げた台湾公立嘉義農林学校を題材にした作品で、現在ポストプロダクション中。台湾で2014年の公開予定。

最終更新:2013/04/19 18:00
1234
ページ上部へ戻る
トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『光る君へ』疫病の流行と宮中での火事

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NH...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真