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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.266

メディアリテラシーを磨く最適のテキストか? “次世代原発”という甘い果実『パンドラの約束』

pandra_pro01.jpgカメラを手にしたロバート・ストーン監督とジャーナリストのマーク・ライナース氏。2人とも環境保護から原発推進派に転向した。

 小泉元総理が“脱原発”を訴えるようになったのは、ドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』(10)がNHKで放映されたのを観たことがきっかけだ。その後、小泉元総理は『100,000年後の安全』の舞台となったフィンランドの核廃棄物最終処理場「オンカロ」を視察。核廃棄物の処理が日本では不可能なことを実感し、“原発ゼロ”を主張するに至った。この国の首相経験者を方向転換させてしまうほどの影響力を、『100,000年後の安全』という一本のドキュメンタリー映画は持っていた。では、小泉元総理はこちらのドキュメンタリー映画を観たら、どのようなリアクションを見せるのだろうか。『パンドラの約束』なる、反原発派にとって厄介な作品が公開される。これまで環境保護の立場から原発に反対していた米国や英国の識者たちが、最近になって次々と“原発推進派”に転じていることを『パンドラの約束』は伝える。2013年に米国のサンダンス映画祭で上映された際に、事前調査では観客の75%が原発反対だったのが上映後には約8割が原発賛成に変わったという。

 『パンドラの約束』を撮ったのは、英国出身、NY在住のロバート・ストーン監督。初めて撮った反核映画『Radio BIKINI』が1987年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされるなど“反原子力”の立場で映画を撮り続けてきた。ところが地球環境保全の重要さを訴えた『Earth Days』(09)を制作するうちに考え方が一変する。このまま原発に反対し火力発電に依存したままだと、地球は温暖化によって近いうちに破滅してしまう。地球を温暖化から守るためには、CO2を排出しない原発しかない。風力発電や太陽光発電は当てにならない。というのがストーン監督の論旨だ。福島の悲惨な状況を日々見ている日本人の多くから「おいおい、ちょっと待てよ」という声が聞こえてきそうだが、ここはもう少しストーン監督の考えを聞いてみよう。

 ストーン監督をはじめ、『パンドラの約束』に登場する環境活動家たちが原発推進派に鞍替えした主な理由はこうだ。1950年代に米国で原発の実用化の研究が進み、2種類の原発が開発された。軽水炉型原発と増殖炉型原発である。増殖炉型は燃費がとてもよく、燃料を再処理・再利用できる。優れものの夢の新エネルギーだった。一方の軽水炉型はシンプルな構造ゆえに低予算で建設することが可能だが、大量の廃棄物が生じてしまう。当時の米国はソ連と軍事、科学、産業、外交……とあらゆる面で競っており、国際市場にいち早く米国主導の原発を普及させるために見切り発車的に軽水炉を実用化させてしまった。スリーマイル島もチェルノブイリも福島も、原発事故はどれも軽水炉で起きたもの。増殖炉だったらメルトダウンは起きず、事故を防ぐことができたという。しかも増殖炉は廃棄物をちょっとしか出さない。増殖炉がこれから普及していけば、メルトダウンの恐れはなく、CO2も排出せず、核廃棄物の捨て場を探さなくても済む。すべて万々歳というわけだ。

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