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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第102回

全員加害者?『エイジハラスメント』で五寸釘をブチ込まれるのは何か

「私たちだって、男子社員は『うんとイケメンか、できるハゲがいい』ですよ!」

 見かねて「もう気が済んだでしょ」と諭す女上司に、英美里はさらに続ける。

「気が済む、済まないの問題じゃありません。ハラスメントを嫌がらせという程度で捉えているから、そういう言葉がでてくるんです。ハラスメントは傷害事件です! 心とプライドを傷つける傷害事件です。ハラスメントをやる人は犯罪者です!」

 そんな英美里に、ベテラン社員・桂子(麻生祐未)が口を挟む。

「相変わらず偉そうねえ、親分。そうよ、あなたこそエイジハラスメントの親分、犯罪者よ」

 桂子は、英美里が「若さ」ゆえに無自覚に周りの女性を傷つけてきたことを白日のもとに晒した上で、五寸釘をブチ込むように断罪する。

「あなたに、ハラスメントで人を糾弾する資格はない!」

「ハラスメント」とは、それまで無意識的、無自覚的に行われ、「ないこと」とされてきた精神的な形なき暴力に名前を与えたものだ。意識的、無意識的にかかわらず、ハラスメントの被害者にも加害者にもなりうる。それどころか、全員が被害者であり、加害者でもある。女の敵は女であり、弱者の敵は弱者だ。だからこそ、たちが悪い。

 加害者を糾弾するのは、別の加害者であり、糾弾されるのは別の被害者だったりする。残るのは、ただ被害者意識だけ……。五寸釘をブチ込みたくても、その対象は曖昧模糊としている。

 そんな複雑怪奇な現実を、『エイジハラスメント』は「痛快」な勧善懲悪的様式を装いながら、一筋縄でいかせないことで浮かび上がらせているのだ。

(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 17:46
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