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追跡ルポ・在日コリアンの若者はいま――

「差別を言い訳にしたら“負け”」在日コリアン3世・ベンチャー企業代表(男性・34)の場合

■在特会が主張するような“特権”なんてない

 ただ最近は、嫌でも耳に入ってくるニュースのせいで、差別という言葉についても、深く考えざるを得なくなったという。4杯目のビールが狭いテーブルに運ばれてきたときには、話題は在特会やヘイトスピーチに及んだ。

「僕は韓国とか朝鮮、それに在日コリアンを嫌いな層というのは、日本からは絶対にいなくならないと思います。それは、差別ではなくて自然なこと。どこの国にだって、そういう人はいますから。僕だって嫌いな人はいる。そういう人たちが、まったく発言できない社会だとしたら、それは民主主義ですらないと思います。ただ、在特会やヘイトスピーチは水準が低いし、やり方を間違ってきた」

 チェ氏は、日本で生活していると在日コリアンであることに多々不便を感じるが、在特会が主張するような“特権”は、感じたことも、使ったこともないという。実際、経営者としてのチェ氏は、客観的に見ても、世界的に見て起業が少ないとされる日本社会で、同世代の平均的な日本の若者より多くの税金を納めている。

「百歩譲って、もし在日特権なるものがあるならば、在特会はそれを証明して、政治家になって、日本の国民の支持のもと、法律を作ってなくせばいい。でも、彼らはそういうことはしないし、できない。裏を返せば、『自分たちは日本人なのに差別されている』ということを叫び続けて、間違った努力しかしていないんです」

 在日コリアンに“特権”がないにもかかわらず、在特会などに関わる人々が『差別されている』と感じ続けることは、自分たち自身の成長を阻害する“鎖”にしかならない。チェ氏がそういった意見を持つようになった背景には、くしくも、幼少期、また青年期の一部を過ごした在日コリアンコミュニティーでの生活がある。

「M・ナイト・シャマランの『ヴィレッジ』っていう映画を知っていますか? 映画の舞台は、外の世界と隔離された小さな村。村の大人たちは、外の世界との境にある森に怪物が出るといって、子どもたちを牧歌的な村に閉じ込め続けます。結局、森の怪物たちは村の大人だった。大人たちは、外の社会で差別を受けた人たちなのですが、その経験から、よかれと思って子どもたちを隔離していたのです。僕はあの映画を見た時に、自分がいた在日コリアンのコミュニティーと重なる部分が多いなと感じました」

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