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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.409

北朝鮮は“トゥルーマン・ショー”国家だった!? 演出だらけの日常生活『太陽の下で 真実の北朝鮮』

taiyouno-shitade03モスクワ・ドキュメンタリー映画祭の会長も務める著名なヴィタリー・マンスキー監督。北朝鮮からの要請で、ロシアでも本作は上映禁止に。

マンスキー監督「撮った映像はデータ化して、すぐに安全な場所に送信しました。北朝鮮側にはNGシーンをカットした後の映像を見せるようにしていました。彼らはロシアも自由のない国で、私のこともプロパガンダ映画を撮っている自分たちと似た立場の人間なのだろうと思っていたようです。とはいえ、ホテルの部屋にはカバンやカメラを置かず、いつも持ち歩くようにしました。ちょっとでも目を離すと、中をチェックされてしまうからです。確かにロシアもソ連時代、スターリンによる独裁政権下では悲惨な状況でしたが、それでも今の北朝鮮ほどではなかったはずです。なぜなら、スターリン時代には優れた作家、音楽家たちが自由を求めた素晴しい作品を残しています。でも、今の北朝鮮にはそのような芸術家がいるように思えません。私が泊まっていたホテルの前の劇場では、抗日運動を題材にしたプロパガンダミュージカル『血の海』しか上演されていませんでした。私が当初考えていた内容とはまるで違うドキュメンタリーになりましたが、これをご覧になった方の心に何か感じるものがあれば幸いです」

 純真無垢そうな瞳をキラキラさせていたジンミちゃんだが、少年団に入団を果たし、体制の一員となっていくことを予感させる形でこのドキュメンタリーは終わりを告げる。ラストカットで、ジンミちゃんがこぼす涙がひどく印象的だ。無事に入団式を終えた安堵感からなのか、それともイノセントな少女時代がすでに終わったことを本能的に察知したのか、ポロポロと大粒の涙を流す。ジンミちゃんがカメラの前で泣き出したことに慌てた北朝鮮側の監督が「楽しいことを考えてごらん」「好きな詩を言ってごらん」といってなだめる。しばらくして、ジンミちゃんは泣くのを止め、「チュチェ革命を受け継ぎ、強く生きることを少年団として固く決意します」とカメラに向かって答える。どこまでがリアル(本音)で、どこからがフェイク(演技)なのだろうか。そして、このボーダーラインが消える日は、いつか来るのだろうか。
(文=長野辰次)

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『太陽の下で 真実の北朝鮮』
監督・脚本/ヴィタリー・マンスキー 撮影/アレクサンドラ・イヴァノヴァ  編集/アオドレイ・ペパルヌィ 音楽/カルリス・アウザンス プロデューサー/ナタリア・マンスカヤ 出演/リ・ジンミ 
配給/ハーク 1月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
http://taiyouno-shitade.com


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最終更新:2017/01/13 18:12
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