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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

「叱られたい」新規ファンが急増!? ももクロの“あかりん”が、女優・早見あかりになるまで

 
 アイドルというのは不思議なもので、元AKB48の前田敦子や島崎遥香のように、アイドルの世界になじめずに違和感を抱えて苦悩している女の子のほうが、魅力的に見えることがある。そこに思春期の葛藤が交わるとなおさらで、つまり最もアイドルに向いていない人がアイドルとして輝いてしまうのだ。それは早見も同様で、本人はアイドルに向いていないと思っていたが、ももクロ時代の早見は誰よりも、アイドルとして輝いていた。

 だからこそ、女優として成功して、(できれば朝ドラで主演を務めて)ももクロとNHK『紅白』で共演してほしいと多くのファンは思っていた。

 だが、ももクロ卒業後、早見は女優としてすぐに成功したわけではなかった。

 アイドルグループに所属していた時は、女優やファッションモデルのほうが似合っていると思われたが、いざ、女優として活動するようになると、何をやっても同じ口調で独自のぎこちなさが残る。普通に話していても芝居がかって見えたので、現代を舞台にしたリアルな作品だと、どうしても、その存在が浮き上がってしまうのだ。
 
 逆に相性がよかったのは、朝ドラ『マッサン』(NHK)や『ちかえもん』(同)といった時代劇だった。着物を着てかしこまった言葉で話している時のほうが、物語にうまくハマっていた。

 おそらく早見は、自然な演技よりも、極端にキャラクターを作り込んだ時のほうが、女優としての魅力が際立つのだろう。その意味で、極めてアイドル的な女優だったといえる。

 映画『百瀬、こっちを向いて。』や連続ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)などで演じた、クールなキャラクターが多かったが、こういった役柄はももクロ時代の“あかりん”の立ち位置の延長線上にあるものだった。

 10代後半は、大人と子どもの間で揺れ動く思春期の不器用な少女を演じることがあった早見だが、最近は『デッドストック』の二階堂のような、大人の女性を演じる機会が増えてきている。早見自身も22歳となり、大人っぽくなった外見に、ようやく内面が追いついてきたのだろう。

 相変わらずぎこちなさはあるが、それはもはや、彼女の個性といっていいだろう。

『デッドストック』がきっかけで、「早見あかりに叱られたい」という新規ファンが増えるのではないかと、ひそかに期待している。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2018/12/12 17:36
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