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西原理恵子の生き様が人生の分岐に──

『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい本』40原が語る“パンツ愛”そして、これから

「イラストのもとになるパンツは、Amazonなどで買って調べているんです。それで、タグとか見ていたら、こういうのが載っていると妄想が広がると思ったんです」

 このアイデアは、見事に成功している。40原の作品には、ほんのりとパンツを履いている女のコの匂いというものがある。ところが、そのデータは、そのパンツが決して架空のものではないことを読者に提示する。その瞬間、フッと読者は鼻で息を吸い込む。そう、広がる妄想が、女のコがはいているパンツ。クロッチの中からから染み出る、生々しい匂いが、あたかも目の前にあるように錯覚させる。

 40原のパンツへの愛が、とりわけ色濃くでるのが、ポージングだ。下から煽るとか、正面からとか、ありきたりなポーズに拠ることはない。

「ボクの趣味が色濃く出ていると思うんですけど、ポージングフィギュアを机に置いて眺めています。それで妄想が膨らむじゃないですか。どういう角度で、どうパンツを見せてもらおうかな……。いろいろとフィギュアを動かして、こうじゃないな、腕の角度とかこうしたほうがいいとか考えています。フィギュアは、可動域が決まってるから、描くときはこうしようととか考えます。それから、基本のポージングはこうで、お尻はこうがいいなとか、書き起こして、絵的なウソへと修整していくわけです」

 この「絵的なウソ」という言葉に、40原のパンツへのこだわりが込められている。絵心のある人ならば、作品をみればハッと気づく。どのイラストも、焦点の中心にはパンツがある。嫌な顔とパンツが融合した作品だが、まずはパンツありきだ。要は、見せてもらっている側=読者の視点では、こんな物語がある。

 パンツが見たくて見たくてたまらない。そして、ついに意中の女のコに「パンツを見せて欲しい」と懇願してしまう。そして、驚き、呆れて、嫌な顔をしつつ、女のコはパンツを見せる。昨年末のコミックマーケットで頒布された『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい漫画』では、その内面的が順を追って、濃厚に描写されている。

 そこでは、女のコとの関係性。募っていく、パンツを見たいという想い、葛藤。いよいよ、パンツを見せて欲しいといわれた時の、女のコの戸惑いと呆れ。そして、いよいよ嫌な顔をされながら見せてもらえるパンツ。わずか12ページの中に、とてつもない濃いドラマが詰まっている。

 そうしたドラマは、1枚のイラストで描かれた場合にも、必ず構築されている。イラスト集の場合は、左ページにまとめられているプロフィールや、嫌な顔をした時に吐く言葉。それらを、40原は絵を描きながら暖めていく。

 最初に考えるのは、大まかなプロフィール。歯科助手、保母さんといった部分。それを考えた上で、描くキャラクターには、一つの方針ようなものがある。

「ボクは、普段はMのような王道の可愛いコたちにパンツを見せてもらいたいと思っているんです。みんなが可愛いと思う女のコたちに嫌な顔される、罵倒されるから気持ちいいと思うんですよ」

 元からSの要素を持っているようなタイプではない。恋愛ギャルゲーの王道ヒロイン的な女のコが、嫌な顔をしながらパンツを見せる。そして、罵倒の言葉を投げかける。そのギャップを演出に重きが置かれている。

 だから、表情を考える時の流れも特徴的だ。イラスト集の左ページでは、描かれている女のコたちが、日常で見せている表情がいくつか描かれる。日常の顔を描いてから、時間軸に沿って、嫌な顔を描いているのかと思いきや、これは逆。

「可愛いコからつくると、嫌な顔をさせにくくなるんですよね。自分でつくったキャラクターなので、嫌な顔の度合いが弱くなってしまうんです」

 イラストが出来上がり、女のコの表情も描いてから、詳細なプロフィールとセリフを考える。

 これは、イラストと同じく重要な部分。例えば、3冊目のイラスト集に描かれた歯科助手さんの場合、こうなっている。

 歯科医院で働く20代のお姉さん。
 マイペースな性格で甘い物が大好き。
 学生の頃から大きな胸がコンプレックス。
 気にするあまり逆に強調してしまうことも。

「歯の治療よりも人格を直した方がいいんじゃないですか?」

 極めて簡潔な文章。「文章が多いとノイズになっちゃう」。あまり文章が多いと、飽きるし脳内で楽しむ部分が削がれていくというのが、40原のこだわり。

「言葉が長いと、ボク自体が萎えちゃうんですよね。妄想で補完する部分があっていいと思ってます」

 だから、目指すのは、できるだけ少ない情報で最大限の表現をすること。

「イラストを描いている間に、ぼやっとイメージはあります。でも、なかなか文章にするのが下手くそで、言葉にアウトプットに時間がかかっています。で、作業を手伝ってくれる<友人>がいるんです。彼は、ぜんぜんオタクじゃなくて、サブカル寄りのキャラなんですが、ボクがばーっと言ってるのを書き留めて、アウトプットしてくれるんです」

 手伝ってくれる友人とは、中学生の時からの付き合い。肉体関係でもありそうなほど、濃密な時間を共に過ごして来た仲。だから、40原の、なかなか言葉にできない情熱的なイメージを、的確に言葉にしてくれる。

 そうして生まれる作品。でも、女のコの名前だとか年齢、どういう経緯で、パンツを見せる見せないの話になったかは、バッサリと省かれている。それも、40原の考えがあってのこと。今、とりわけ商業でリリースされている作品は、どんなジャンルも説明を語りすぎているのではないかと見ているから。

「長く売れている作品というのは、謎が多かったり、妄想で補完したり、あるいは友達と議論できる要素が多いと思うんです。そうやって語ることも、作品としての醍醐味の一つだと思うんですよね」

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