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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.497

少女は亡くなった後もネット上で凌辱され続けた!! フェイクニュースが招く惨劇『飢えたライオン』

女子高生の生と死が情報として消費されていく恐怖を描いた『飢えたライオン』。韓国プチョンの映画祭では「最優秀アジア映画賞」を受賞している。

 名優にして名監督だったオーソン・ウェルズが若き日に演出したラジオドラマ『火星人襲来』は、ウェルズの演出があまりにもリアルすぎたために「本当に火星人が襲ってきた!」と思い込んだリスナーたちはパニック状態に陥ったと言われている。ラジオでは「これはドラマです」と何度か断りを入れていたものの、火星人の恐怖に怯えるリスナーたちの耳には届かなかった。80年の歳月が流れた今も、この構図は変わらない。情報を受け取る側は自分の興味のあること、センセーショナルな部分しか耳に入らず、誤った情報がひとり歩きし、さらに歪んだ形で拡散されていく。緒方貴臣監督の『子宮に沈める』(13)以来となる新作『飢えたライオン』は、ネット社会を流布し、怪物化していく“フェイクニュース”を題材にした社会派ドラマとなっている。

 本作の主人公となる高校生の瞳(松林うらら)は身に覚えのないフェイクニュースによって殺され、亡くなった後もネット上で繰り返し凌辱され続ける。そんなおぞましい事件の発端は、いつもと変わらない朝だった。高校2年生の瞳は、ヒロキ(水石亜飛夢)との交際が順調で幸せいっぱいだった。担任の男性教師が児童ポルノ禁止法で逮捕されるという騒ぎが起きるも、瞳には無関係の出来事だった。ところが、翌朝からクラスメイトたちの瞳を見る視線が変わってしまう。ネット上に担任教師が少女と淫行している動画が出回っており、その少女が瞳だという噂がクラス中に溢れ返っていた。

「これ、私じゃないよ。全然、似てないし」と笑って否定する瞳だったが、噂は加速して学校全体へと広まっていく。仲のよかった親友たちから、ハブられる瞳。交際相手のヒロキまで「みんな、言ってるし」とよそよそしい態度を見せるようになる。母親の裕子(筒井真理子)は仕事で忙しく、悩みを打ち明けることもできない。意地になって登校すると、嫌がらせが横行し、街では知らない男性から名前を呼ばれるようになる。学校にも自宅にも街にも居場所のなくなった瞳は、駅のホームへ入ってきた電車に思わず近づいてしまう──。

高校2年生の瞳(松林うらら)はイケメンのヒロキ(水石亜飛夢)との交際も順調だった。悲劇は突然に降り掛かった。

 緒方監督は、性的虐待問題を扱った『終わらない青』(09)でデビューし、第2作『体温』(11)はラブドールと暮らす孤独な男性を主人公にするなど、情報過多な現代社会で情弱な生活を強いられる若者の姿を描いてきた。ネグレクト事件を題材にした前作『子宮に沈める』は2013年に全国公開され、大きな波紋を起こした。『子宮に沈める』が予想外の反響となったことが、本作を撮ることのきっかけになったと語る。

緒方「いくつかの育児放棄事件を参考にして、あくまでもフィクションドラマとして『子宮に沈める』を製作したんですが、映画の情報を部分的に知った人たちから大阪で起きた実在の事件をそのまま再現したものだと思われてしまった。ネグレクトは母親ひとりだけの問題なのかと問い掛ける映画のつもりだったのに、自分の狙いとは逆に渦中にあった母親をバッシングする側に加担してしまう結果に繋がってしまった。自分のつくった作品が、人を傷つけてしまうという怖さを実感したんです。とはいえ、人の心にまるで届かないような作品をつくるわけにもいきません。そんなとき、10代の若者が殺害される事件が多発し、被害者の顔写真がマスコミにさらされ、個人情報がネット上で広まっていく様子を目の当たりにしたわけです。マスコミやネット上の情報によって生身の人間が傷つき、誰が被害者になるか加害者になるか分からない今の社会を映画にしようと思ったんです」

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