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傍観ライター・清水2000の「韓国珍スポ探訪記」VOL.25

韓国珍スポ界を影で操る謎の集団がいた? 一世を風靡した「マッチョなキリスト像」跡地でつながる点と点

 雑草が生い茂る公園を一通り歩いた後、せっかくだから話を聞いてみようと、表にあった教会の扉を叩いてみたが、誰もいないようで返事がない。敷地を出て、近所の人に出会えないかあたりをきょろきょろするが、出会うのは犬猫ばかりだ。

にゃーん

 今回の取材は失敗だ……。もう帰ろうと思いバス停に行くと、ご婦人がひとりバスを待っていた。市内行きのバスはここでいいのか質問しながら、「キリスト教彫刻公園って知ってます? ぼく日本から見に来たんですけどね~」と話しかけたところ、ご婦人の目がキラリと光った。

「ええ知ってますよ、私はそこの牧師の妹ですから」

 ちょっと! たったひとり出会った住民が、筋肉キリスト像を立てた人の親族とは、どれだけ運がいいのか、あるいはどれだけ小さい町なのか? なかなか来ないバスを待ちながら、30分ほど楽しく話を聞かせてもらった。

 キリスト教彫刻公園がなくなったのは、昨年のこと。誕生したのが2012年だから、たった5年しかこの世界に存在しなかったことになる。

 撤去の理由は、公園の創立者である牧師が亡くなってしまったからだそう。息子もキリスト教の牧師であり、教会は受け継いだが、公園は撤去することにした。造るのはもちろん、壊すのだって大金がかかるのだから、そのままにしておけばいいのに……と思うのは部外者の勝手な意見だろうか。なお、石像はすべて壊され、保存してあるものはないという。

 筋肉キリストについて、「腕がこーんなに太かったんだよ!」とご婦人は楽しそうに話す。「なぜ筋肉ムキムキだったんでしょうねえ」と質問すると、「さあ……兄がどう注文したかわからないけれど、中国の業者に任せたら、ああなっちゃったんじゃないですかね」という答え。

 中国の業者とは……間違いない、大岩顔彫刻公園の石像を作ったのと同じ業者だ! 韓国珍スポ界を影で操る謎の集団の存在に、胸を熱くする私がいた。

「結構お金はかかったけど、本人が好きでやったことだからいいんですよ」と、彫刻公園について終始、明るい口調で話していたのが印象的だった。彼女の思い出の中に、筋肉ムキムキのキリスト像はいつまでも堂々とそびえていることだろう。それはとても素敵なことのように思えた。

 帰りのバスの中、5年間しかこの世に存在しなかった、ひとりの牧師の夢の公園に思いを馳せた。昨年、韓国珍スポの横綱「釜谷ハワイ」が廃業するなど、人間味あふれるスポットがどんどんなくなっている。それらをネットの隅に記録していくのが、珍スポライターの務めなのだとあらためて思った。

(文・写真=清水2000)

最終更新:2018/11/02 09:47
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