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実は、みんなこのマンガ大好きだろ? 黒い笑いが止まらない2018年最高傑作『ゴミ屋敷とトイプードルと私 #港区会デビュー』

『ゴミ屋敷とトイプードルと私 #港区会デビュー』(小学館)

 ここまで酷いのは、現実にはあり得ないだろうけど、でもなんか実在してそう……。

 ネットを巡回していると、このマンガの広告に何度も遭遇した人もいるのではなかろうか。

『ゴミ屋敷とトイプードルと私 #港区会デビュー』(小学館)

 インパクトのあるシーンをバナーにするのが配信サイトの広告の定番とはいえ、この作品の広告だけは「なんなんだ、このマンガは?」と思わずクリックしてしまった人も多いハズだ。先頃、最新話の配信がさまざまな配信サイトで始まっているが、この広告には、恐ろしい形相をした女性の絵のコマ。

「わたし、ブロックされたの?」

 ある程度、ネットに慣れ親しんでいる人ならSNSをネタにした作品であることは自ずと理解できる。でも、そこまで恐ろしい形相をするなんて、いったい、どんなヤバい出来事が起きているのだ?

 そう思って買ってみたマンガは、2018年の最高傑作といってもよいインパクトのある作品だった。

 作者の池田ユキオは、女性向け実話マンガを数多く手がけている人物。もともと、この作品は「ゴミ屋敷とトイプードルと私」のタイトルで一話完結で描かれた作品であった。

 そこでは、30歳を過ぎても自分がキラキラ系女子だと思っている痛いOLの破滅物語が描かれていた。勤務先は、大手広告代理店と、まさにキラキラした夢の具現化。

「24歳の後輩でも10歳の年の差なんて感じない」

「ほら私、読モやってたじゃない? 意識高めでいたいんだよね……」

 34歳でも現実が見えないヒロインの自意識過剰な台詞が止まらない。その後輩ちゃんも、真面目に相手にしたくないのか、テキトーに話を合わせているだけだけど、それに気づいたりはしない。毎日、羨望のまなざしを向けられていると勘違いしつつ、高いブランドバッグを買って、ネイルサロン通いに励む。ああ、でも、30歳を過ぎて貢いでくれる男もいないから、全部カードでリボ払い。支払いが苦しくなったら、両親に泣きつくのだ。

 そんな痛い女が、父親が病気で倒れたのがきっかけで、カードが使えなくなって一気に人生崩壊するのが、この物語。

 この話をベースに、最近話題の「インスタ映え」とか「港区女子」とか、傍から見れば痛い現象を煮詰めてブチ込んだのが「#港区会デビュー」編なのだ。

 現在連載は続いている最中だが、世の人々が感じているキラキラしている女子とか、金持ちとかに対する怒りや嫉妬の感情をすべて癒やしてくれる迫力のある作品。

 舞台は同じ、大手広告代理店。前作では傍観者だった25歳OLのサヤちゃんが、連載のヒロイン。前作のヒロインを嘲笑していたサヤちゃんだけど、世の人が想像する「意識高い系」を凝縮したような存在。

 これまで交際していたイケメンディレクターの彼氏にプロポーズされて、幸せの絶頂……かと思いきや指輪がデザイナー制作の一点もので、セレブ向けブランドじゃないことを同僚に指摘されて、一気に冷める。

 なんで? 一点物、最高だろ? と思うのは素人。この物語の登場人物は金額とか、人が称讃しているものに対してのみ価値観を見いだす人種なのだから。

 いきなり幸せが色あせたサヤちゃん。彼女が目標とするのはInstagram……じゃなくて、作中では「フォトスタグラム」と表記されるSNSで話題の<misaki>なるセレブ。

 どこの誰かはわからないけど、日々、クルーザーに乗ったり、海外旅行に出かけたり。サヤちゃんにとっては目指すべきセレブ。そこに、自己を同一化させるのが、サヤちゃんの人生の目標なのである。

 そう思っていたら、ようやく訪れた営業部への異動。そして、港区のセレブが集まるパーティー。

 もうね、描かれるセレブもシャツのボタンはいくつも外しているし、高い食べ物にワインと、まさに俗物の見本市。作者の怨念が伝わってくる。

 でも、輝ける未来など、待っているハズはないというのが、この作品。まさに、今、連載では転落の過程に。

 そんな「ざまあみろ」な物語、実は存外に読んでいる人は多いのだ。誰も、人が不幸になることを楽しんでいることを知られたくないのか、口には出さない。でも、これほどまでに黒い快感を与えてくれる作品は、なかなか出会うものではない。

 2018年、この作品は隠れた最高傑作なのではなかろうか。だいたいのキラキラしたものにムカついている人には、読んでもらいたいものだ。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/12/06 23:00
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