日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 市民を追う価値『東京湾岸畸人伝』
昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 62冊目

市井の人々を追う価値を改めて知る『東京湾岸畸人伝』

市井の人々を追う価値を改めて知る『東京湾岸畸人伝』の画像1
『東京湾岸畸人伝』(朝日新聞出版)

 なかなか市井の人を取材するのは苦労するものである。だって「何を目的に……?」とか言われることもしばしばあるからだ。

 とうとうと、取材する理由とか情熱を語ることができるとは限らない。だって、なんとなく関心があって、どういうふうに書くのか。それをどういう媒体で発表するのか。何も決まっていないままに取材が始まることも、たびたびあるからだ。

『東京湾岸畸人伝』(朝日新聞出版)では、築地のマグロの仲卸、横浜港の沖仲仕、馬堀海岸の能面師、木更津の寺の住職、久里浜のアル中病棟の広告アートディレクター、羽田の老漁師と、東京湾岸に暮らす市井の人々の人生を追っていく。

 この山田清機という書き手の筆致は見事。名前からしてハードボイルドな雰囲気だけど、この本といい『東京タクシードライバー』(同)といい、ハードボイルドな文体と行動で、取材対象の人生と生き様とを追っていく。

 うっすらとテーマ性は見えるけど、それよりも書き手の興味が情熱が光る。なんというか、自分しか出会うことができなかったであろう取材対象に、どんどん惹かれていくのを隠さないのである。

 どの章も、オシャレとはまったく無縁であることは言うまでもない。でも、この泥臭さこそが湾岸の片隅にある人生をキラリと光らせているのだ。

 実のところ、この本に出会ったのは、たまたまであった。ふと、ネットで見つけた書評を読んで「こんな本があったのか」と、すぐに購入したのである。

 こうした本。書き手の興味を出発点として、無名の人々を追っていくノンフィクション。それは、今は決して主流にはなり得ていないだろう。でも、ノンフィクションの本質とは、こうした作品にあるということを、改めて教えてくれるはずだ。
(文=昼間たかし)

最終更新:2019/11/07 18:31
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【1月期の冬ドラマ、続々スタート】視聴率・裏事情・忖度なしレビュー

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

ビートたけしと文春とのビミョーな関係

「ダウンタウン」松本人志が、飲み会で一般女性...…
写真
イチオシ記事

粗品「審査員をやってあげたい」

 霜降り明星・粗品が、また物議を醸しそうな物言いをしている。  21日にYouTubeの個人チャンネル「粗品のロケ」を更新した粗品。その動画のタイ...…
写真