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“歩く伝説”山本政志監督が『ロビンソンの庭』と未完の大作『熊楠 KUMAGUSU』について語る

文=長野辰次

歩く伝説山本政志監督が『ロビンソンの庭』と未完の大作『熊楠 KUMAGUSU』について語るの画像1
1980年代を代表するカルトな名作『ロビンソンの庭』。廃墟で暮らし始めたクミ(太田久美子)は、次第に自然と同化していく。

 1980年代に盛り上がったインディーズムーブメントにおいて、その中心にいた人物が山本政志監督だ。ロックバンド「じゃがたら」の初期プロデューサーを務め、16ミリフィルムで撮影した自主映画『闇のカーニバル』(82)はベルリン映画祭やカンヌ映画祭に出品された。音楽と映画が混然化した熱気を放ち、新しい時代の到来を感じさせた。続く35ミリフィルム作品『ロビンソンの庭』(87)は単館系での上映ながらロングランヒットを記録し、ミニシアターブームの先鞭となった。

 現在はワークショップスタイルの映画塾「シネマ☆インパクト」を主宰するなど、プロデューサーとしての活躍が目立つ山本監督。クラウドファンディングによるHDリマスター化を進めている初期代表作『ロビンソンの庭』にまつわる伝説の数々、また撮影が中断したまま28年の歳月が流れた町田康主演作『熊楠 KUMAGUSU』の内情を語った。

──バブル期の東京都内に残っていた廃墟の数々で撮影した『ロビンソンの庭』には、多くの伝説が残されています。出資者を求め、長者番付(高額納税者ランキング)の上から順に当たったそうですね。

山本政志監督(以下、山本) やったやった(笑)。その頃は長者番付が毎年発表されていて、上から順に電話した。もろろん、うまくはいかないよ。それでもめげずに、日本船舶振興会(現日本財団)の笹川良一会長ならお金をたくさんもっているはずだと思って電話したんだよ。「俺、頭いいな!」と思って。やっぱりダメだったんだけど、あの頃はなんでもやってみたね(笑)。それで経済紙の記者から「佐々木ベジって人に、会ってみたら」と勧められた。当時のベジは、“秋葉原のバッタ王”と呼ばれていた人だったんだよ。

──本名が佐々木ベジとはすごい。ネット検索してみると、今も「企業再生引受人」として活躍中のようですね。

山本 本当に面白い人だよ。初対面で、「テレビショッピングを撮れるか」と訊くから、「当たり前だろ」と答えたら、その場で広告代理店に電話して、地方局での放送を決めたんだよ。しかも、「明日までに納品しろ」と(笑)。こちらも「やれる」と答えたから断ることもできず、知り合いに電話をしまくって撮影できるスタジオを速攻で抑えたよ。4本くらい撮影して、翌朝まで掛けて編集したら、その編集スタジオに黒塗り車が現われたんだよ。どこの暴力団関係者かと思ったら、ベジだった(笑)。それでベジに融資してもらい、制作会社レイラインを立ち上げた。2年間弱で6000万円くらい出資してもらった。でも、俺は「じゃがたら」復活ライブとかアルバム制作だとか、好き勝手なことばっかやってた。そのつけは、全て親会社のベジのとこに回してね。そんなとき、うちのおふくろが遺産相続で4000万円受け取ったんで、「社会貢献に使うべきだ」と俺がぶんどったの。ベジから「その4000万円を預けたら、3倍にしてあげるよ」と甘い言葉を囁かれたけど、さすがにそれは断った(笑)。

歩く伝説山本政志監督が『ロビンソンの庭』と未完の大作『熊楠 KUMAGUSU』について語るの画像2
『ロビンソンの庭』のHDリマスター化を進める山本政志監督。「公開時の鮮やかな色彩をデジタル技術で蘇らせ、若い世代に観てほしい」と語る。

混沌さを極めた廃墟での撮影

──映画制作費は守ったわけですね。いよいよ都内に残っていた廃墟の数々で『ロビンソンの庭』を撮影することに。

山本 目黒、立川、井荻、初台……。都内の6か所くらいの廃墟で撮影したかな。今はどこの廃墟も消えてしまったね。井荻の廃墟は確か、区民公園にするかゴミ処理場にするかで地元住民の間でトラブっていて、国会議員のところまで撮影の許可をもらいに行ったんだよ。「8ミリフィルムを使って、5~6人で撮っている小さな小さな映画です」とか言ってさ。本当はスタッフ50人くらいで、クレーン3台入れてガンガン撮ったんだけど。廃墟一面をペインティングして、やりたい放題やったね(笑)。

──ジム・ジャームッシュ監督作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84)の撮影監督トム・ディチロが参加したことも話題でしたが、トムは撮影途中で帰国することに。ケンカ別れだったんですか?

山本 いや、そうじゃないよ。もともとトムとは40日間という約束で契約を結んでいたんだけど、最終的に撮影は2か月半に及んだ。途中から俺、スケジュールは気にせずにやりたいようにやろうと決めたわけ。プロデューサーの浅井隆(現『アップリンク』代表)にしてみれば「何、それ?」だよな(笑)。今はさすがにそんなことはしないけど、あのときは本当に自分が撮りたいものを撮ろうとこだわったんだよ。『ロビンソンの庭』が欧州の映画祭で上映された後、NYに寄って、トムや照明のジム・ハイマンたちと一緒に試写したんだけど、トムたちはガールフレンドに「俺が撮ったこのシーンの光がいいだろう」とか自慢してた。和気あいあいな雰囲気でさ。撮影現場の地獄のような日々はなんだったんだろうと思ったよ(笑)。プロデューサーの浅井は海外勢との仕事や海外映画祭での上映で、今の仕事につながるものがあったと思うし、演出補の諏訪敦彦は、8ミリ作品から続いて3本目の参加で、いつもながらの地獄を案外楽しんでたみたいだし、助監督だった平山秀幸さんは商業映画の監督として活躍することになるけど、『ロビンソンの庭』の打ち上げでは、「この現場に参加できてよかった」と酔っぱらいながら泣いてたし、林田裕至はこの作品が美術監督としてのデビュー作だし、俺もスタッフワークで作る映画の面白さが分かった。みんなのこだわりが結実した作品だよ。

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