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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.531

日本領土が武装勢力に占拠されたら、どうする!? かわぐちかいじの世界を初実写化『空母いぶき』

「戦わなければ守れないものがある」。空母「いぶき」の初代艦長・秋津(西島秀俊)は武装勢力に対して一歩も引かない姿勢をみせる。

 スケールの大きな海洋アクションもの『沈黙の艦隊』『ジパング』などで知られる人気漫画家・かわぐちかいじのコミックが初めて実写映画化された。西島秀俊、佐々木蔵之介、佐藤浩市らが出演した『空母いぶき』がそれだ。旧日本海軍の伝統を引き継ぐ海上自衛隊が日本領である南洋の孤島を占拠した武装勢力と軍事衝突するという、ミリタリー愛好家には見逃せない作品となっている。

 物語の中心人物となるのは、航空自衛隊のエースパイロットだった秋津竜太1佐(西島秀俊)。米軍の伝統にならい、海上自衛隊初となる空母「いぶき」の初代艦長に任命される。生え抜きの海上自衛隊員であり、「いぶき」の副艦長となる新波歳也2佐(佐々木蔵之介)とは、防衛大学で首席の座を争った関係だった。自衛隊が空母を所有することに国会や世論が厳しい声を浴びせる中、艦内でも“武闘派”秋津と“平和主義者”新波との間で国防に関する意識の違いが浮かび上がる。

 そんな中、日本領である南洋の孤島が、正体不明の武装勢力によって占拠されたという情報が舞い込む。演習中だった「いぶき」を旗艦に、護衛艦「はつゆき」「しらゆき」、イージス艦「あしたか」「いそかぜ」、潜水艦「はやしお」で編成された「第五護衛隊群」は現場海域へと出動。そこで待っていたのは、敵艦隊からの魚雷、およびミサイル攻撃だった。東京にいる垂水総理(佐藤浩市)の決断により自衛隊初となる「防衛出動」が下され、ついに戦闘状態へと突入する。

首相官邸の地下にある危機管理センターから自衛隊を指揮する垂水総理(佐藤浩市)。悩みに悩んだ末、自衛隊初となる「防衛出動」を下す。

 現在も「ビックコミック」(小学館)で連載が続いている原作コミックとの大きな違いは、「いぶき」が対峙することになる敵の正体。2014年に連載が始まった原作では自衛隊は中国人民解放軍と戦うが、映画版では架空の国「東亜連邦」となっている。また、原作では中国軍は尖閣諸島に加え、先島諸島も軍事制圧するが、映画版ではやはり架空の島「初島」をめぐる24時間の攻防に限定した設定へとアレンジされた。現場の自衛隊員たちは有事の際にどう対処するのか、自衛隊を東京から指揮する総理はどのような情報をもとに決断を下すことになるのかをシミュレーションしてみせる。ちなみに脚本は、首都・東京のテロに対する脆弱さに警鐘を鳴らした劇場アニメ『機動警察パトレイバー2 the move』(93)の伊藤和典、海上自衛隊員の反乱を描いた『亡国のイージス』(05)の長谷川康夫との共作となっている。

「いぶき」搭載機であるステルス型戦闘機、イージス艦や潜水艦の活躍が描かれるが、本作で重点が置かれているのは、どこまでが軍事衝突でどこからが戦争なのかというボーダーの引き方だろう。そのボーダーを引くことになるのは東京の首相官邸にいる垂水総理であり、また最前線にいる秋津艦長の判断によって事態は大きく変わることになる。副艦長の新波はあくまでも自衛隊は「専守防衛」を貫かなくてはならないと主張するが、相手の攻撃を待っていれば自衛隊員から犠牲者を出すことは避けられない。さらに一度局地戦が始まれば、中距離弾道ミサイルによって東京をはじめ日本全土が標的となる危険がある。一手間違えれば、全面戦争を招き、多くの命を奪いかねない。ポーカーフェイスを装う秋津は、命懸けの詰め将棋を強いられる。

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