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この国にはかつてエロ雑誌が群雄割拠していた! 『日本エロ本全史』著者が語るエロ本の栄華盛衰記

エロ雑誌を支えたスタッフたちは今……

 興隆を極めたエロ雑誌業界だが、読者の高齢化が徐々に進んでいく。多くの雑誌が読者層に合わせて熟女ものに転身を図るも、部数はやがて低迷化。インターネットの普及も著しく、英知出版は2007年に倒産、白夜書房のエロ部門が分社化したコアマガジンはエロ漫画や実話誌が中心となった。全盛期には100万部以上の発行部数を誇った「ザ・ベストマガジン」も2011年に休刊し、KKベストセラーズはエロ本から撤退。エロ雑誌は次第に姿を消していく。出会い系サイトからの広告出稿によって、廉価なエロ雑誌がコンビニに並ぶ“出会い系バブル”がゼロ年代には起きたが、一時的なもので終わった。エロ雑誌業界で辣腕を振るった編集者やカメラマンたちの、その後も気になるところだ。

「エロ本が消え、出版社だけでなく、多くの編集プロダクションもなくなりました。編集者の中には別の部署や情報サイトなどに回された人もいますが、エロ雑誌で培ったノウハウを使うことができず、苦戦しているんじゃないでしょうか。AV業界でスチール撮りを続けているカメラマンもいるけれど、雑誌と違ってAVのジャケット撮影はプロデューサーの指示どおりに撮らなくてはいけないので、大変でしょうね。作家性が強く、面倒くさいカメラマンは使ってもらえない。仕事がなくなって、田舎に帰るカメラマンやライターが多いようです。そういう自分も仕事先をネットに移行しなくちゃいけないんですが、紙媒体への愛着があってそれができずにいます。それで今回みたいな手間ばかりかかる本をつくっているんです。

 エロ本がコンビニから撤去された件は、エロ本業界だけの問題ではありません。コンビニから雑誌売り場そのものが大きく減っています。雑誌全体の売り上げが落ちているという出版業界全体の問題でもあるんです。エロ雑誌文化が今後復活するとは思えませんが、英知出版が印刷所にうるさく言い続けたこともあって、日本のグラビアの印刷技術は向上したとも言われています。現在も巨乳専門誌として発行されている『バチェラー』(大亜出版)はグラビアの美しさが海外で高く評価されています。エロ本が日本の出版文化を支えていた側面もあるんじゃないでしょうか」

 戦後日本の出版文化を彩った100冊のエロ雑誌に宛てた100通のラブレターとも言える『日本エロ本全史』、ぜひ手に取ってみてほしい。

●安田理央(やすだ・りお)
1967年埼玉県出身。美学校考現学教室考現学卒業。雑誌編集、コピーライターを経て、フリーライターに。主な著書に『日本縦断フーゾクの旅』(二見書房)、『痴女の誕生 アダルトメディアは女性をどう描いてきたか』『巨乳の誕生 大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか』(ともに太田出版)、『AV女優、のち』(角川新書)。共著に『エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること』(翔泳社)、『エロ本黄金時代』(河出書房新社)などがある。

最終更新:2019/10/14 12:12
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