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「仙台母子心中事件」母が残した170枚の手記……学校・教育委員会だけの責任なのか?

学校側はいじめを認めるも……

 夜中までパソコンに向かって手記を書くこともあったという母親は、子煩悩で、真面目な人だったのだろう。また、専業主婦で、学校や地域が生活のすべてだったことも、事態を悪化させた原因といえる。第三者から見れば、転校するなどほかに選択肢はなかったのかという気持ちにもなるが、精神的にも追い詰められた母親は、娘を早く楽にしてあげたい、という気持ちに取りつかれてしまったのかもしれない。

 事件後、父親は妻が残した170枚の手記とあらためて向き合い、妻の無念を晴らそうと奮闘している。当時は「仕事が忙しい時は深く読み込めない時もあった」という父親だが、学校とのすれ違いや、妻の無力感を知ることとなった。

「もっと近づいて一緒に(無力感を)感じてあげられなかったことが申し訳ない」(父親)

 事件から2カ月後、学校は保護者会を開き、そこでいじめがあったことは認めたものの、“無理やり握手させるようなことはなかった”と否定した。また、「しにたい」と訴えた手紙についても、母親に夏休みの宿題をやっていないことをしかられたことが原因ではないか、と答えている。

 現在、この事件は仙台市が設置した第三者委員会によって事実関係の調査が行われているが、焦点のひとつが、いじめ防止対策推進法が定める重大事態にあたるかどうか。年間の欠席日数30日というのが重大事態の目安となっており、認められれば保護者も含めたケアを担う専門家などが派遣されるという。そのため、父親は教育委員会に娘の成績表の提出を求めた。欠席日数を確認するためだったが、中身は1学期の分だけで、2学期の出欠の記録は空白だった。

「これはどういうことですか?」

と困惑する父親に、担当者は「学校に確認しなければなりませんが、学校からお預かりしているのはこれだけです。2学期の分はおそらく評価できなかったということじゃないかと思います」と答える。「(いじめを)軽視しすぎではないか」と語気を強める父親に、「そういうわけではないが、そう捉えられてしまう対応だったと思う」と、担当者は平謝りするばかり。

「ここまでひどいとは思ってなかった。そういう対応を妻が取られてきたんだと思うと、もう本当に悔しい」(父親)

 本当に欠席日数は30日を超えていなかったのか? 父親は娘のクラスの出席簿を取り寄せ、妻の残した手記や携帯とのやりとりと見比べた。すると、不審な点を発見する。出席簿では遅刻となっている日も、実際は妻が学校に出向いただけで、娘は「人に会いたくない」と家で留守番していた。つまり、事を大きくしたくない学校側による、隠ぺい工作が行われていたのだ。

 父親は今年9月、妻の手記を手がかりにした娘の欠席日数を第三者委員会に資料として提出し、「重大事態となる30日を超えていた」と訴えた。

「今まではスタートの準備。これからが本当の始まり」

 そう語る父親の声からは、強い決意が感じられた。

 今回の番組は、学校や教育委員会の対応のまずさを浮き彫りとするような構成だったが、母娘を無理心中に至らしめた要因はこれだけではないはず。親同士の関係や狭い学区ゆえの閉塞感、あるいは頼れる親族が近くにいなかったこと……。母親の苦しみのはけ口が少しでもあれば、悲劇は起こらなかったと思わざるを得ない。

 果たして第三者委員会がどのような結論を下すのか、注目が集まる。

最終更新:2019/10/25 13:49
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