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江戸木純×叶井俊太郎のサイテー映画対談

サイテー映画との出会いは人生を大きく変える!? 『死霊の盆踊り』ほか映画史に残る珍作奇作たち

チャールズ・ブロンソンが現代に蘇った!?

12月20日(金)より公開の新作『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』。ブロンソンのそっくりさん、ロバート・ブロンスキー主演のハードボイルド作品だ。

 

――叶井さんはアルバトロス時代に『アメリ』(01)を大ヒットさせ、その後独立。トルネード・フィルムは残念なことになりました。

叶井 残念な結果でした。みなさんには大変ご迷惑をお掛けしました。河崎実監督の『日本以外全部沈没』(06)はヒットしたんだけど、全国公開した『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08)で調子に乗りすぎてしまいました。

江戸木 『日本以外全部沈没』は面白かった。「日本のエド・ウッド」を自称している河崎監督は特殊な才能の持ち主だと思う。

叶井 本人には言えないけど、河崎監督は製作費が100万円でも1億円でも、完成させる映画のクオリティーは変わらないと思う。それってすごい才能だよね。河崎監督の最新作『ロバマン』は2020年1月10日(金)公開なので、こちらもよろしくお願いします。

――その後の叶井さんはトランスフォーマー社に再就職し、『ムカデ人間』(09)がヒット。2018年からはサイゾー社に席を置き、パリ人肉事件で有名な佐川一政のドキュメンタリー映画『カニバ パリ人肉事件38年目の真実』(17)を劇場公開。『人肉饅頭』から手がけてきた作品は、すべて鬼畜系一色で一貫しているのはすごい。

叶井 最初にやった『人肉饅頭』がやっぱり大きい。『人肉饅頭』の宣伝のために、佐川さんに応援コメントをもらったりしたからね。やっぱり、佐川さんのことはずっと気になっていたから。『カニバ』はヒットとは言えないけど、赤字にはなってないよ。今は『ムカデ人間』を撮ったトム・シックス監督の新作を日本で公開できないか検討しているところ。他人が死ぬ瞬間を見て、オナニーする人たちを描いた本当にひどい映画。デヴィッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(96)のオナニー版みたいな感じ。配給権が高すぎるのがネックだね。

江戸木 クローネンバーグと『ムカデ人間』の監督を同列に語っていいのかという問題もあるような気がするけど(笑)。

叶井 江戸木さん、12月20日(金)から『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』も公開するんでしょ。どうですか、チャールズ・ブロンソンのそっくりさんは?

江戸木 ロバート・ブロンスキーは、本当にブロンソンにそっくりで驚くはず。ハンガリー出身の元軍人で、馬の調教師などをやった後、スペインの西部劇村のショーに出ていたところを、スカウトされて映画デビューした人。来日したときはずっと一緒にいたんだけど、話しているうちに「もしかしたら、本当のブロンソンじゃないのか」と思えてきた。約束した時間には1秒も遅れないし、超マジメでブロンソンを全身でリスペクトしている、すっごい律儀な人。今回の『野獣処刑人』はブロンソンの代表作『狼よさらば』(74)シリーズの超絶オマージュ作で楽しめる。ブロンスキーのそっくりさんぶりは海外でも話題になっていて、出演オファーが殺到しているらしい。チャールズ・ブロンソンの新作はもう観ることはできないけど、ブロンスキー映画はこれからも期待できそう。きっとさらに面白い映画がつくられると思う。

叶井 若い人は観にくるかな?

江戸木 若い世代にも、この機会にブロンソン映画の面白さをぜひ知ってほしい。『野獣処刑人』の初日には、ブロンソンの熱烈ファンのみうらじゅんさんと田口トモロヲさんのブロンソンズが来てくれることになってます。映画鑑賞って、予告やチラシを見て「どんな映画なんだろう」とワクワクしながら劇場に向かうのも含めての楽しさだと思う。いかがわしさもないと、映画はつまらない。

叶井 見世物小屋に行くみたいな、何が待っているか分からない面白さがないとね。

江戸木 最高の映画があれば、最低の映画もある。サイテー映画は映画としては最低でも、決してつまらない映画ではない。自宅にいたんじゃ出会えない楽しさを、ぜひ映画館で味わってほしいな。

(取材・構成=長野辰次)

●江戸木純(えどき・じゅん)
1962年東京都生まれ。東北新社、ギャガなどで日本語版制作や宣伝を行ない、数々の邦題やキャッチ・コピーを担当。日米合作映画『カブキマン』(90)では企画・キャラクターデザインを手掛けた。独立後は映画評論家としての執筆活動の傍ら、インド映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95)、スウェーデン映画『ロッタちゃんとはじめてのおつかい』(93)などの国内配給を手掛けた。著書に『龍教聖典 世界ブルース・リー宣言』(洋泉社)、共著に『バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争』(洋泉社)ほか。

●叶井俊太郎(かない・しゅんたろう)
1967年東京都生まれ。91年に洋画配給会社アルバトロスのグループ会社ニューセレクトに入社。94年よりアルバトロスに異動し、洋画バイヤー兼宣伝マンとして活躍。『アメリ』(01)を大ヒットさせた後、独立。ファントム・フィルム、トルネード・フィルムなどの映画会社を立ち上げた。その後はトランスフォーマー、レスぺを経て、2018年よりサイゾーへ。ドキュメンタリー映画『カニバ パリ人肉事件38年目の真実』の国内配給を手掛けた。2020年2月7日(金)より、観ると死ぬ映画『アントラム/史上最も呪われた映画』が公開。著書に『突然、9歳の息子ができました』(サイゾー)、江戸木純との共著『映画突破伝』(洋泉社)ほか。

 

『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』
監督・脚本・撮影・編集/レネ・ペネス
出演/ロバート・ブロンジー、リチャード・タイソン、エヴァ・ハミルトン、レイア・ペレス、ダニエル・ボールドウィン、ストミー・マヤ
配給/エデン 12月20日(金)より新宿武蔵野館にてロードショー
(c)2018 Action Film Partners LLC.All Rights Reserved. 
http://www.eden-entertainment.jp/thebronson

『死霊の盆踊り』
製作・監督/A・C・スティーヴン 脚本/エド・ウッド
出演/クリスウェル、ファウン・シルバー、パット・バリンジャー、ウィリアム・ベイツ
配給/エデン 12月28日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
(c)1965 Astra Productions, under license from Vinegar Syndrome
http://eden-entertainment.jp/saitei2020

 

『プラン9・フロム・アウタースペース』
製作・監督・脚本・編集/エドワード・D・ウッド・ジュニア
出演/グレゴリー・ウォルコット、クリスウェル、トー・ジョンソン、ヴァンパイラ、ベラ・ルゴシ
配給/エデン 2020年1月11日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
(c)Legend films.
http://eden-entertainment.jp/saitei2020

最終更新:2019/12/19 20:00
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