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パンドラ映画館

“初期衝動”だけでどこまで走り続けられるのか? 大橋裕之の人気漫画を7年かけて映画化『音楽』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

両刃の剣である表現活動

ビートルズやピンク・フロイドのほか、ロックの名盤のジャケ画を模したシーンがいろいろと登場する。洋楽好きな人も楽しめるはず。

 人前で何かを表現することで、閉塞感を抱えていた人間が社会と繋がることができる。コミュニケーションの始まりだ。うまいか下手かは関係ない。何者でもなかった生き物が、ひとりの何者かへと進化を遂げようとする瞬間でもある。大橋裕之の原作コミックからも、岩井澤監督の手描きのアニメーションからも、そんな喜びが溢れ出ている。だが、表現活動は両刃の剣でもある。振り切った表現は、必ずしも多くの人に理解されるとは限らず、厳しい批評にさらされ、自分自身も傷つきかねない。また、表現活動を熱心に続ければ続けるほどテクニックは上達するが、その分だけ初期衝動は次第に薄れてしまう。

 それでも、それでもやっぱり音楽を続けたい。何かを表現したい。言葉にはないならない心の声を発したい。社会的モラルに縛られずに、体の奥から生じる熱いものを外の世界へと解き放ちたい。それが自分は生きているという証だからだ。

 研二にとって高3の初夏に出会ったベースギターは、『2001年宇宙の旅』に現れた石板・モノリスみたいなものだ。研二たちにとっては、一生忘れることができない出会いだった。研二たちはモノリスに触れたことで、それまでの自分とは違うもうひとりの自分へと進化した。研二たちが楽器と出会ったように、誰にもその人の一生を決定してしまうような大切な出会いがある。そんな大切な一生の出会いを、アニメーション映画『音楽』はくっきりと描いている。アニメーションとは、そして映画とは、生きることを肯定し、祝福するための表現である。

(文=長野辰次)

 

『音楽』
原作/大橋裕之 脚本・絵コンテ・キャラクターデザイン・編集・監督/岩井澤健治 
音楽/伴瀬朝彦、GRANDFUNK 、澤部渡(スカート) 主題歌/ドレスコーズ
声の出演/坂本慎一郎、駒井蓮、前野朋也、芹澤興人、平岩紙、竹中直人、岡村靖幸
配給/ロックンロール・マウンテン
1月10日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(c)大橋裕之 ロックンロール・マウンテン Tip Top

長野辰次(ながの・たつじ)

長野辰次(ながの・たつじ)

フリーライター。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PATR2』ほか。

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最終更新:2020/01/10 20:00
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