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パンドラ映画館

“初期衝動”だけでどこまで走り続けられるのか? 大橋裕之の人気漫画を7年かけて映画化『音楽』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

サプライズが用意された野外フェスシーン

初めてベースギターを手にした研二(声:坂本慎一郎)。オリジナルの曲づくりに熱中していくことで、退屈な日常生活が大きく変貌を遂げていく。

 研二たちが自宅に集まって何やら始めたことが気になり、ヤンキー仲間の亜矢(声:駒井蓮)は研二の家まで演奏を聴きにいく。歌詞もなければ、曲としても完成していない力任せの演奏だったが、「男らしくていいんじゃない」と亜矢には好評だった。上機嫌の研二たちはバンド名を「古武術」と決めた。ケンカしか能のなかった3人組は、ミュージシャンという新しい顔を持つことになった。新しい顔はピカピカに輝いている。

 演奏方法はまるでデタラメな「古武術」だったが、彼らの演奏には元々のロック音楽が持っていた荒々しい初期衝動が詰まっていた。超不良高校からの襲撃や研二と亜矢との甘酸っぱい海辺のエピソードなども織り込みながら、「古武術」は町内で開かれる音楽フェスティバルに出場することが決まる。初期衝動だけで突っ走ってきた「古武術」は、初めてのライブを成功させることができるのか。かつて見たことのない珍妙で、ワイルドなステージが幕を開ける。

 大橋裕之の描くあの独特な目をしたキャラクターたちが、スクリーンの中でリアルに動き、走り、そして楽器を持って演奏する。岩井俊二監督の長編アニメ『花とアリス殺人事件』(15)にも使われた「ロトスコープ」と呼ばれる、実際の人間の動きをトレースしてアニメーション化した手法が活かされている。何だか最新技術を用いているように思えるが、原画はすべて手描きとのこと。ちなみに研二の声を演じているのは、園子温監督の大ブレイク作『愛のむきだし』(09)の主題歌「空洞です」を歌った元「ゆらゆら帝国」の坂本慎一郎だ。

 原作コミックでは研二たちの演奏は、基本「ボボボボボボ」という擬音でしか表現されていなかった。だが、今回のアニメ版はリアルな動きと同じように、研二たちの演奏にもリアルな音が付けられている。決して上手すぎず、でも人を惹きつける力のある音楽がスクリーンから流れ出る。クライマックスの野外フェスシーンにはサプライズも用意され、観客に至福の時間をもたらせてくれる。

 初期衝動だけで突っ走ってきた「古武術」だったが、人前で演奏することで、さらにもうひとつ上の高みへと上る。ケンカに明け暮れていた日々よりは、少しだけ見渡しがよくなる。もちろん、プロデビューできるかどうかとかは別問題だし、オーディエンスが多くなればなるほど声援だけでなく、ディスる声も増えていくことになる。

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