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エッジ・オブ・小市民【10】

安倍総理の思いつき休校要請から見える“国難”と決定的に損なわれてしまったもの

イメージ画像/出典:longlonglong

 2月28日の夜、小学6年生の子供を持つ友人の女性から、大まかに要約すると、次のような話を聞いた。

「急に小学校最後の日を宣告されて、子供が泣いている。楽しみにしていた6年生を送る会、卒業式、すべてが中止になるのか。うちの県には感染者が出ていないのに。自分も明日がランドセル姿の見納めかと思うと動揺する。子どもたちになんと説明すればいいのか……」

 新型コロナウイルスの流行に伴い、2月28日に突然、安倍晋三総理大臣が要請した3月2日からの全国一律の休校要請を受けてのことだ。

 翌週、彼女の住む自治体は3日から春休みまでの休校を決定。結局、卒業式のみ在校生や来賓の出席をなしにするなど規模を縮小して行うことが決まったそうだ。

 あまりにも突然の休校要請がもたらした事態によって、心を痛めて悲しい思いをした子どもは全国津々浦々にいるはずだ。子育て世代であれば、身近にそういう子の話を聞くことがあるだろう。あるいは、我が子が泣くようなこともあったかもしれない。そういう子供たちに対して、「これは何より大切なあなたの健康、命を守るため、そして感染者を増やさないために仕方のないことなんだよ。子どもたちにとても残念で悲しいけれど、どうにか乗り越えよう」などと、事情を説明して慰めてあげることができれば、どれだけいいか。しかし、そういう説明ができないことが、今回の騒動の一番の問題なのだ。

専門家は全国一律休校の感染拡大抑制効果に否定的

 なぜ、そういう説明ができないのか。それは全国一律の休校による感染の拡大防止にどれほど効果があるのか、疫学的、統計学的な根拠やエビデンスがないからだ。

 もちろん、すでに多くの感染者が出ている地域では休校に意味はあるだろう。しかし、全国一律の休校要請にどれほどの感染拡大の抑制効果があるのか。政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下、『専門家会議』)の委員で日本環境感染学会理事長の吉田正樹東京慈恵会医科大学教授は次のようにコメントしている。

「感染が起きていない地域で同じ対応をとることにどれほど効果があるかはわからない。子どもたちが外に出歩き、友だちと遊んでしまっては効果は下がるだろうし、現時点で評価することは難しい」(NHK NEWS WEB

 そのほか、これまでの報道から感染症に関する専門家のコメントをいくつか引用しよう。

『専門家会議』委員・川崎市健康安全研究所所長・岡部信彦氏

「専門家会議で議論した方針ではなく、感染症対策として適切かどうか一切相談なく、政治判断として決められたものだ。(略)ウイルスに感染した患者がいない地域もあるのに、全国一律に小中高校に要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」(NHK NEWS WEB

「休校も感染症対策の一環ですが、今回、多くの社会的なマイナス要素を無視して行うほどの効果があるとは思えません」(AERA.dot

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議委員・東京大学医科学研究所教授・武藤香織氏

「この政策の優先順位の高さ、どういう状況になったら解除できるかといった基準など、政府のご判断の根拠を理解できていない状況です」(BuzzFeed News

国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授・和田耕治氏

「(休校要請の報に触れて)これは誰が決めたんでしょう。ひっくり返りそうになりました。今のタイミングで、ここまで社会への影響の大きい対策をやるならどんな根拠をもってやるのかきちんと示さなくてはなりません」(BuzzFeed News

 全国一律の休校を肯定的に評価する意見もあるが、結果的に学童保育や保育所は対象外となったので、そもそもの「感染を拡大させないために子供を集団で生活させない」という前提となる根拠はここで崩れてしまう。通常の学校生活に比べて、学童保育や保育所のほうが子供たちの濃厚接触の機会が圧倒的に多いからだ。

 このウイルスは親から子に感染させるケースは多くても、その逆に子から親に感染させるケースは稀だという。家庭内感染が非常に多くなっている現状では、親が外で感染して休校中で家にいる子どもに感染させてしまう危険性のほうが高いのではないか。また、子連れの出勤を認める企業や授業はやらなくても子どもを受け入れる小学校も出てきているという。もうなんのための全国一律休校なのかわからない。そして、潜伏期間は最長2週間程度なのに、なぜ春休みまで約3週間の休校を求めているのか。そして、休校はいつ解除されるのか。それも謎だ。

 こうなると、なぜ効果があるかどうかもよくわからないまま、感染者の出ていない地域も含めた全国一律の休校要請などという決断がされたのか、その根拠を改めて知りたくなるのは当然だろう。この社会的に大混乱をもたらした決断を下したのは、今さらいうまでもなく、我らが安倍総理大臣。そして、ご存じの通り、この決断にはなんの根拠もなかった。

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