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「モラハラ」のトリセツ第6回

モラハラ妻は被害者!? モラハラ問題をこじらせる「ジェンダーバイアス」(前編)

Nさんの怒りが湧くトリガーは?

 Nさん自身は今の状況に問題意識を感じている様子で、それは自分の中になんらかの原因があるという認識もされているように見受けられました。

 その点、とても鋭い人であるといえます。自分が何に苦しんでいるのか、内省するのはしんどい部分も多いのですが、それがつらいからといって向き合うことを放棄して他責的・他罰的な思考に取り憑かれてしまうと、問題の解決は遠ざかってしまいます。

 逆に、そこできちんと自分を見つめられる人は、支援者が丁寧に聞き取りをし、当事者が引っかかっている部分をひとつずつ拾い上げるお手伝いをしていけば、いずれは自分でもつれてしまった糸を解きほぐして、問題の本質にたどり着けるということが多いです。

 誤解されがちですが、どんなに経験豊富な支援者でも、1~2時間のカウンセリングで魔法のように状況を好転させることはできません。解決の道は、時間がかかっても、あくまで当事者自身で探すしかないのです。その困難さに寄り添い、時に少しだけ手助けをする、支援者はそのためにいます。

 Nさんの場合も、まずはじっくりとお話を聞かせてもらうところからスタートしました。Nさんが抱えている問題の糸口を探すつもりで始めた会話でまず驚いたのは、Nさんの膨大な口数。一般的には男性より女性のほうが1日に発する単語の数が多いとはいわれていますが、それにしてもNさんの口からは次から次に、多くの単語が繰り出されてきます。人の話を聞く機会多い僕でも、驚きの量です。要は、とてもよくしゃべる人だということですが(笑)。

 これまでの出来事をはじめ、次第に話がそれて日常の出来事や趣味の話、インスタグラムにアップしている素敵な写真の数々を見せていただく……等々、かなり濃密なおしゃべりの時間となりました。

 そして最初のカウンセリングでわかったこととしては、Nさんの夫に対する怒りが湧くトリガーは「自分の話をちゃんと聞いてもらっていない」と感じたときだということです。自分が話をしているときに夫がちょっと横を向いたりすると「聞いてんのか!!」と怒鳴りだし、ひどいときはクッションなど、当たってもケガをしない程度のものを投げつけたりしてしまうそうです。話を聞いてもらえていると感じているときや、話をしていないときのNさんは、怒りを感じることはほとんどないそうです。「話を聞かせる」ために「怒鳴る」「ものを投げる」という行為は第1回でもお話しした「パワーコントロール」に当てはまります

 おしゃべりな人というのは、特段珍しくは ありません。しかし、(相手が聞いているにもかかわらず)自分の話を十分に聞いてもらえてい ないと一度思ってしまうと怒りが引き起こされてしまうというのは、これまでの体験によるトラウマ等が影響していることが経験上多いと感じています。ここに、Nさんの問題の根っこが見え隠れしている気がしました。

 そこで僕は「この怒りはどこからくるのか」にフォーカスを当てて、さらに丁寧にNさんのお話を聞いていくことにしました。
(【第7回】へ続く)

中村カズノリ(なかむら・かずのり)

1980年生まれ。WEB系開発エンジニアの傍ら、メンズカウンセリングを学び、モラハラ加害者としての経験をもとに、支援を行っている。

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Twitter:@nkmr_kznr

なかむらかずのり

最終更新:2020/03/16 10:20
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