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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.578

日本最古の学生寮はどうすれば存続させられる? 壁を乗り越えたい『ワンダーウォール 劇場版』

渡辺あや脚本作『ワンダーウォール 劇場版』。築100年を超える学生寮を舞台に、社会へと巣立っていく若者たちの葛藤が描かれる。

 文化遺産が数多く残る京都市のなかでも、ひときわ異彩を放っているのが京都大学の学生寮「吉田寮」だ。1913年に建てられた木造二階建ての自治寮は、京大生でなくても利用できる敷居の低い、自由な空間として知られている。レトロなムード漂う寮内は、寮生たちが使っている布団、本、雑貨などが溢れ返り、ある種のユートピアのようにも感じられる。渡辺あや脚本による『ワンダーウォール 劇場版』は、そんな吉田寮によく似た日本最古の学生寮を舞台にした物語となっている。

 大学3回生のキューピー(須藤蓮)は、高校時代にネットで見つけた学生寮に魅了され、受験勉強を乗り切った。念願かなってオンボロな学生寮に入寮でき、人間関係が濃厚な寮内での青春を謳歌している。寮内は年上の寮生に対しても敬語は禁止、トイレはジェンダーフリー。問題が起きたときは、寮生同士で徹底的に話し合う。寮外の人たちからは「変人たちの巣窟」と呼ばれていたが、キューピーも大学1回生のマサラ(三村和敬)も毎日が文化祭のような寮生活が愛おしくて堪らなかった。

 一方、かねてより大学側は学生寮の取り壊しを進めようとしていた。築100年以上になるので、耐震性には問題がある。大学4回生の三船(中崎敏)たちが中心となり、補修工事をすることで今の学生寮を維持するべきだと、団体交渉を重ねてきた。だが、寮生たちとの話し合いに理解を示していた教授が大学を辞めたことから、事態は大きく変わってしまう。

 学生課の窓口は、ある時から大きな壁で仕切られるようになり、団体での交渉ができなくなってしまった。窓口担当のスタッフを通してしか、大学側に意見を伝える手段はなかった。そんな状況のなか、大学側が一方的に、新しい寮生の募集は中止、今いる寮生たちも寮から出ていくようにと通告してきた。

 三船が先頭に立ち、寮生たちは学生課へと抗議に向かう。ところが、学生課の窓口に立っていたのは、それまでと違った若くて美しい女性・香(成海璃子)だった。三船は香に対して何も言えないまま、立ち去ってしまう。寮生たちが決定的な敗北を喫した瞬間だった。

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