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『有吉の壁』『有ジェネ』はまるで『内P』? 内村流の芸人育成術が開花したワケ

太田プロ公式サイトより

 2015年より不定期の特番で放送されてきた『有吉の壁』(日本テレビ系)が、4月より晴れてゴールデンタイムでのレギュラー放送へと昇格した。昨今、バラエティ番組で活躍中の四千頭身やハナコといったお笑い第7世代はもちろん、注目の若手芸人が多数出演しており、この番組を通じて知名度を獲得した芸人たちも多いようだ。

 また、シソンヌなど舞台人気が一級品ながらもテレビでいまいち活躍できなかった中堅芸人たちが、実力通りの活躍を見せているのもこの番組の特徴だ。その理由をバラエティ番組で構成を担当している放送作家が解説する。

「シソンヌやかが屋などコントを主戦場にするコンビは、漫才的な瞬発力が求められるひな壇ではなかなか前に出ていけず歯がゆい面がありましたが、場面でボケたりネタの仕込みが重視されるこういう番組では輝けるんです。また、アルコ&ピース平子さんも業界内にはファンが多いんですが、自分を出しすぎるキャラがテレビ番組では使いづらいとスタッフなどから言われていて本人も自覚していますが、同じ事務所の先輩である有吉さんの番組ということもあって、『有吉の壁』ではのびのびとネタを繰り出していますよね」

 番組の中で有吉弘行は、“ピンポンブー(○×判定)”で、芸人たちが披露するネタを判定するだけ。要は芸人たちの力量まかせだが、必ずおいしくしてくれるので若手もチャレンジしがいがあるようだ。

 こうした構成力の結果か、8日の初回2時間スペシャル(後7:00~8:54)は、視聴率は第1回が世帯平均12.8%、個人平均8.5%、通常放送となった第2回が世帯平均11.4%、個人平均7.9%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)とかなり好調だ。

「若手が自由にネタを披露する番組スタイルが、ひな壇トークが主体となっている昨今のお笑いバラエティ番組の構成とはまた違っていて好評の様子ですし、放送作家の仲間内やSNSでも話題となっていますが、特に『内村プロデュース』(テレビ朝日、以下内P)を思い出したという声をよく聞きます。その中には『ウッチャンの遺伝子を、有吉が受け継いでいる』なんて声もありましたが、あながち大げさとは思えませんね」(同)

 たしかに、『内P』はその名の通り、当時若手だったさまぁ~ずやバナナマンといった芸人をプロデュースした番組だった。番組の常連だった当時の有吉は、猿岩石として『進め!電波少年』(日本テレビ系)のヒッチハイクで大ブレークした後、仕事がほとんどなかったどん底の時代で、そんな彼を救い上げたのも内村光良だと言えよう。

 実際、内村の方も有吉には並々ならぬ思いがある様子だ。

 その思いを覗かせたのが自身が出演する『スクール革命』(日本テレビ系)4月12日放送回でのこと。回答者全員が別々の回答を上げていくというゲームでの一コマだった。内村は、日本テレビのバラエティ番組を挙げるというお題に対して、自身がMCを務める人気番組『世界の果てまでイッテQ!』(同)ではなく、わざわざ『有吉の壁』を挙げたのだ。ゴールデン帯で冠レギュラーになる有吉のためにか、プチ番宣を行っていたわけだ。最近では共演することはほとんどなくなったが、師弟のような深い絆が伺えるエピソードだ。

「有吉さんが若手にネタをやる機会を作ってあげているのは、内村さんの影響もあると思いますよ。同じように内村さんの影響を大きく受けた番組づくりをしている芸人と言えば、くりぃむしちゅ~の有田さんが挙げられる。『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)で出てきた海砂利水魚は、爆笑問題やネプチューンなどに差をつけられていた中で『ウンナンの気分は上々』(TBS系)での改名をきっかけに人気を獲得しました。内村さんに恩があることは間違いありません」(同)

 現在は数多くの冠番組を持つ有田哲平だが、その中の一つには若手のネタ見せ番組である『有田ジェネレーション』(TBS系)がある。実力のある若手をいじりつつも自由に泳がせ、ブレイクのきっかけを作り出しているという点では有田も有吉と同じ動きをしているのだ。また、NHK総合では『有田Pおもてなす』という番組内で有田Pを名乗っていることも”ウッチャンイズム“を継承しようとしているようにも見えるだろう。

 このように多くの芸人が参考にしている内村の”若手育成術”だが、大手企業の人事担当者に言わせると理にかなっているそうだ。

「内村さんのマネジメントは非常に現代的で、理想の上司に4年連続でトップになったことも納得です。最近、企業での社内教育において、時には叱責するなど鞭を使いつつスキルを叩き込む”ティーチング”よりも”ファシリテーション”というスタイルが多くなっています。このスタイルは新人の良い点を伸ばしたり、考えさせたりしながら、参加を促していくといったスキルで、まさに『内P』での内村さんの振る舞いに近いもの。内村さんは先見の明がありますね」

 先輩と後輩、上司と部下という関係性において、共に作り上げていくという作業を行う際には、結局、社内のパワーバランスのまま一方的な関係になりやすいそうで、一歩間違えるとパワハラになりかねない場合もある。そこを上手にやっていくためには才覚と人格が必要なのだとか。

「内村さんが使い、有吉さんが受け継いだ○☓も、ビートたけしさんのピコピコハンマーよりソフトですよね。同じ○☓を明石家さんまさんや松本人志さんが持ったら、若手は緊張感が全然違うと思いますよ。内村さんのソフトなやり方が、イノベーションを生む新たな若手を育てているのでしょう」(同)

 その結果が、くりいむしちゅ~やさまぁ~ず、さらには有吉といった多くの冠番組を持つ芸人なのだから、内村のマネジメント技術が卓越していることがわかろうもの。今後も有吉、有田から”内村的なお笑いの薫陶”を受けた次なる世代が、お笑いの革新を生み出していくのかもしれない。

黒崎さとし(編集者・ライター)

1983年、茨城県生まれ。ライター・編集者。普段は某エンタメ企業に勤務してます。

Twitter:@kurosakisatoshi

くろさきさとし

最終更新:2020/04/27 09:19
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