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「モラハラのトリセツ」第10回

夫は逮捕され、妻はシェルターに避難……同級生夫婦が壮絶DVから回復するまで(後編)

文=中村カズノリ(なかむら・かずのり)

再びシェルターに避難、別居へ

 以前と同様、口論から暴言、手や足が出てしまう状況になり、これはもうダメだと思ったHさんはホテルに逃げ込み、グループワーク主宰の味沢さんが運営している京都のシェルターで2カ月を過ごします。その後、都内に戻り、別居生活を始めました。京都のシェルターではスマホを預かられることもなく、比較的自由で、ゆっくりとカウンセリングを続けながら、Hさん自身が別居の決意をできる時間があったのがよかったといいます。

 京都のシェルター入居時は、Kさんも居場所を知っていたので、シェルターに脅迫の電話がかかってくることもあったそうですが、味沢さんは誰も悪者にせず、間に入って対応してくれたといいます。

 再別居後もHさんはグループワークに参加し、生活面の不安などがある中でも「つながり続けた」こと、自分から孤立を選ばなかったことは、Hさんのすごいところだと率直に感じます。

 そんな中、あるグループワークの回で、Hさんは、Kさんの父親が亡くなったと報告しました。その時はそこまで重大なこととは知る由もなかったのですが、これがKさんにとって転機でした。

 その後、Kさんは子どもと会う条件として「グループワークへの参加」をHさんから提示され、再びグループワークに足を向けるようになりました。

 ほかの参加者はKさんを温かく迎え、Kさんもグループワークの中で、自分の育ってきた環境や価値観について、本音を語り始めました。

「妻を殴って骨折させてしまった」――そんな話をしても、ここでは頭ごなしに否定されることはありません。「それはあなたもしんどかったね」と、まずねぎらいの言葉をかけられます。

 決して加害行為を肯定するわけではありません。ですが、加害者も被害者も、責められれば何も言えなくなり、それがまた抑圧になってしまいます。安心して本来の自分を出せる場があって初めて、自分の内面に目を向け、なぜそうしてしまったのか、その「気づき」を得るきっかけが生まれるのです。

 Kさんは亡き父親が経営していた会社を継ぐことになりました。それから数年、2人はできるだけグループワークに足を運び、同じ問題を抱えた仲間たちとの対話や、自分自身に向き合うことを繰り返しながら変化を重ねていきます。Kさんは時間とともに人当たりが柔らかく、自分のことを素直に語るようになり、Hさんにも自己肯定感が育まれていきました。

  あらためて今、父親が亡くなったことがKさんにとっては大きな変化であったと、2人は語ります。

 Hさんによると、Kさんは父親の仕事の小間使いにされており、父親と仲のいい社員からはパワハラを受けていたそうです。また、朝一番に会社に来て、夜は最後に帰るという激務で、その鬱憤がHさんに向かってしまっていたのです。

 またグループワークでKさんは、自分が育った環境がかなり抑圧されていたことに気づきました。父親から特にそれが強かったそうで、殴られることも多かったKさんは、父親がこの世で一番怖かったといいます。その結果、Kさんは「父の顔を立てなければいけない」「家族は協力しなければいけない」という意識がとても強くなったそうです。しかし、父親の死後、そこから解放された気がするといいます。

 Kさんは自らの選択が迫られるさまざまな場面で、「父親ならどうしただろうか」と考えてしまうことが多かったそうです。「いま考えると、それも抑圧によるものだったのかもしれない」とKさんは言います。語るという行為を通し、自分の価値観や考えの様式に、あらためて気づくことができるのです

 父親以外にも、過干渉な母親や、「殺すぞ」が口癖だった体格がよくて怖かった高校時代の先輩などから影響を受け、Kさんのコミュニケーション様式は培われてきたのではないかといいます。このように、自分を形作ったものについて再確認することが、自分を変え、問題を終わらせていくと僕は思っています。

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