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「モラハラのトリセツ」第11回

元モラハラ加害者の僕が、再びモラハラ問題を起こした話(前編)

妻と心理的に距離を置き、問題の根っこを探る

 そこでまず自分が取った行動は、妻と子どもと、心理的に距離を置くことでした。早く解決したい気持ちもありましたが、ここで焦って「解決」のためのコミュニケーションを相手に迫ってしまうと、ろくな結果にならないことは、これまでの経験で思い知らされていました。

 そこから数日、妻とは必要最低限のコミュニケーションで過ごしながら、自分の中に渦巻くモヤモヤと戦う日が続きました。問題の根っこを、他人からではなく、自分の中から探り当てる作業です。自分がどんなマイナス感情を抱え、それがどこから来て自分を動かしていたのか? 自分の中にあるどんな価値観を、妻に押し付けるためにパワーを使ったのか? それを探った結果、「焦り」に起因する不安があることまではわかりました。

 職業柄、こんな時の対処法を知っていたのは不幸中の幸いでした。実践としても、ギリギリの線でなんとかできたとは感じています。ですが、それでもしんどかったことをよく覚えています。それに、まだ「焦り」の原因、根っこにある何かが見つからない状況でした。

 その時に思いついた心当たり以外にも原因はあるかもしれません。そんな時は人に相談するなどして、ひとりではたどり着けない原因を探る作業が本来必要になってくるはずでした。しかし、いま思い返すと、この時の僕は、人に相談する選択肢を無意識に除外していたのです。

 問題が発生した数日後、妻から「仲直りしたいんだけど、まだ無理かな?」と声をかけられました。僕としてはケンカではなく自分の問題なので、仲直りも何もないのではないかと思いましたが、それをわざわざ言ってまたこじらせるのも避けたい程度には冷静になっていました。相手から歩み寄ってくれたのがうれしかったのも確かです。

 ですが、自分の中にある問題の正体がわからないうちは、まだ距離は保っておいたほうがよいと感じた僕は「まだ整理がつかないので、待ってほしい」と伝えました。妻はこの返答に対し、「わかった」と承諾してくれました。

 引き続き、僕は焦りの原因や、その周辺にあった出来事や感情を整理することに注力しました。今回、自分の加害性を呼び起こした根っこについては、なんとなくつかみかけてはいながらも、なかなかうまく言語化ができませんでした。

 原因がつかめないまま、時間だけが過ぎていくことに、もどかしさを感じていました。しかし、急いでほどこうとすれば、モヤモヤの糸が余計に絡まってしまうかもしれない――。ここはじっくり、自分の中を探りたいところでした。ところが、次の日は入籍記念日で、家族で外食する約束をしており、お店の予約もしていました。

 自分の問題の根っこがどこにあるか、明確に見えてこない状況で家族と外に食事に行くのは、正直、不安もありました。ですが、思いもよらず、その食事をきっかけとして、解決への糸口が見え始めてきたのです。
(後編へ続く)

 

中村カズノリ(なかむら・かずのり)

1980年生まれ。WEB系開発エンジニアの傍ら、メンズカウンセリングを学び、モラハラ加害者としての経験をもとに、支援を行っている。

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Twitter:@nkmr_kznr

なかむらかずのり

最終更新:2020/06/13 15:00
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