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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

逆境続きのNHK大河『麒麟がくる』 川口春奈抜擢は不幸中の幸いだった?

川口春奈『夫のカノジョ』大コケが転機に?

 川口は、07年にファッション雑誌「ニコラ」(新潮社)のオーディションでグランプリを獲得。09年に、宮沢りえ、蒼井優、夏帆といったそうそうたる女優が演じた「三井のリハウス」CMのリハウスガールに抜擢という、若手清純派女優の王道を歩むことになる。

 そして、同年のドラマ『東京DOGS』(フジテレビ系)で女優デビュー。その後は『放課後はミステリーとともに』(TBS系)や『天魔さんがゆく』(同)といったドラマに出演し、順調にキャリアを積み重ねていく。

 しかし、民放プライムタイムのドラマ初主演となった『夫のカノジョ』(同)の平均視聴率は3.87%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)、最低視聴率が3.0%(同)と結果が振るわず、1話短縮の打ち切りとなってしまう。

 ドラマの放送時間が木曜夜9時で、同時間帯にテレ朝の人気ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』があったことが一番の敗因で、必ずしも川口の責任とはいえないのだが、マスコミから低視聴率女優というレッテルを張られてしまい、その後の数年間は主演から遠のいてしまう。

 だが、結果的にこの停滞期は、川口にとってはプラスに働いたのではないか。

 川口のキャリアは清純派若手女優としては華々しいものだったが、彼女ならではの個性は見えにくいところがあった。そのため、この路線でいくといずれ限界にぶつかっていたと思うのだが、一度、小休止したことで、うまく軌道修正できたのだ。

 彼女が23歳の時にコメディドラマ『ヒモメン』(テレビ朝日系)では年相応の女性を演じて好評だったが、特別な美少女ではなく、育ちが良い年相応の等身大の女性を演じた時にこそ、川口の魅力は光るのではないかと思った。

 それは『麒麟がくる』の帰蝶に対するアプローチにも表れている。帰蝶は、特別な存在ではなく、信長の妻となってしまったことで怪物として振る舞わざるを得なくなった、普通の女の子なのだ。

 つまり、怪物ぞろいの『麒麟がくる』の中では、最も人間らしい、現代的な存在といえる。

 この帰蝶の在り方が、新しい戦国大河を作ろうとする本作の在り方に、見事にハマった。

 コロナ禍も含め、逆境続きの『麒麟がくる』だが、川口春奈という逸材を抜擢できたことは不幸中の幸いだったといえよう。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2023/02/21 11:35
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