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ロフト創始者・平野悠がコロナ問題に直面しつつも世に問うた「壮絶な純愛小説」とは?

75歳で無職になった著者の「誓い」

 かつての関係性を想い出させるような鮮烈な体験をした筆者は、平野の付き人に数日間だけ復帰して、その生き様を間近で感じてみたいという想いを抱くようになった。それは、己の責任感から会社を去り、75歳で無職になってしまった平野が、小説の印税はすべて「ロフト」の運営に役立ててほしいという誓いを立て、日々精力的なプロモーションを展開する決意をしたからに他ならない。

 押しかけるような形で小説のプロモーション現場に帯同しようかと考えていた矢先、平野から下北沢駅前の「フラワーズロフト」に顔を出さないかという電話があった。

 その晩は、下北沢北口を貫通する最大幅26mの道路計画に反対したグループ「Save the 下北沢」の主要メンバーが、出版のお祝いをする予定で店を訪れたのだった。ところが、シャンパンを空けたメインテーブルで小説家然と佇んでいれば良いものを、バー営業を再開した店員たちに労いの言葉をかけるのと同時に、カウンターのレイアウトや照明の角度が気になって仕方がなく、店内を歩き回っては仔細なアドバイスを繰り返す様子を見て、思わず苦笑いをしてしまった。

 翌日は「新宿ロフト」の店内で、小説と同時に刊行された『定本 ライブハウス「ロフト」青春期』のPVインタビューカット撮影と、大手ニュースサイトによるロングインタビューやスチール撮影が、様々な取材陣の出入りとともに忙しなく組まれていた。長時間に及ぶ取材は、あまり気乗りのしない音楽関係の話題が中心だったように記憶しているが、過密スケジュールの中で体調を気遣う筆者の心配をよそに、エネルギッシュに自らの体験談を喋りまくっていた。

 その週末には、「ロフトプラスワン」で新刊2冊の同時刊行を記念した配信番組が企画されたため、雨に濡れた歌舞伎町を急ぎ足で店へと向かった。ゲスト出演したPANTA(頭脳警察)から、ピースボートでのリアルな恋愛体験を追及された平野だったが、両者を隔てるアクリル板を盾に決して真実を語ろうとはしなかった。そんな、日頃の強気な言動とは裏腹のシャイな一面があり、それを知る人々にステージでイジられたりする瞬間の反応が、これまた面白かったりもするのだ。

 個性的な出演者たちとの打ち上げが深夜まで続いたからなのか、珍しく平野が西武新宿駅の手前でタクシーを停車させた。手招きに応え、同じ区内に住む梅造社長と、ボックス型の車輛の窓を全開にして同乗させてもらった。複数のラジオ番組や配信イベントに出演する為、週明けから大阪でのプロモーションへと旅立つ平野だったが、涼しげな夜風に撫でられたその横顔からは、微塵の疲れも読み取ることはできなかった――。

 以上、『セルロイドの海』を上梓した平野悠の近況を纏めた。

 以降は、「ロフトプラスワン」とも所縁の深いルポライター・昼間たかしによる、『セルロイドの海』の書評である。

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