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ロフト創始者・平野悠がコロナ問題に直面しつつも世に問うた「壮絶な純愛小説」とは?

70歳を過ぎ、ピースボートの世界一周ツアーに参加

 コロナ禍で次々と仕事が延期になり、自宅待機を余儀なくされた背景もあって、「ロフト」でのドキュメンタリー撮影や、平野の用心棒役をやらされていた頃の得難い体験が、なぜだか日を追うごとに甦ってくるのだった。そんな時、平野から電話があり「ついに小説の発売日が決まった! 緊急事態宣言明けにPVを撮ろう」と、あの懐かしいフレーズが聴こえてきた。

 昨夏より、社長の加藤梅造を中心とした「ロフト」のスタッフが集う【出版宣伝戦略会議】の末席に呼ばれていた筆者は、全店舗休業の煽りを受けて窮地に立たされた「ロフト」の出版部門から、平野の小説が無事に発刊されるのかどうか心配でならなかった。

 『セルロイドの海』と命名されたこの長編小説は、70歳を過ぎてからピースボートの世界一周航海ツアーに参加した平野の実体験がストーリーに反映されている。したがって小説の発刊を知った人々からは、悠々自適なクルーズを満喫した実業家が人生を回想する、「社長漫遊記」的な趣きの作品なのだろうと思われていることも多いようだ。

 しかしながら、筆者の知る平野は、かつての世界84ヵ国を放浪した旅から始まり、その後はドミニカ共和国に拠点を移して、レストランや貿易会社を経営。ドミニカを撤退して「ロフトプラスワン」をオープンしてからも、使節団の一員として北朝鮮を訪問したり、東南アジア4ヵ国を巡るバックパッカーの旅を実現させている。

 それ以降も、9・11の直後からNY・グランドゼロへと現地取材を決行し、さらには外務省の渡航禁止命令を無視してイラクでの反戦活動に旅立ってしまったのだ。平野には、ピースボートの牧歌的な航海とは別次元の、危険と背中合わせの紛争地帯へと本能的に旅立ってしまうような、硬派なロマンチシズムが存在する。加えて、日本国内の旅に目を向けると、四国八十八箇所を巡るお遍路の旅から全日本ゲストハウス紀行、冬の北海道終着駅の旅に沖縄ママチャリ一周旅行と、周囲にはネタでやっているんだろうと思わせながらも、自ら掲げた目標に向かって一心不乱に取り組む姿勢に、爽やかな感動を覚えてしまうことも多かった。

 『セルロイドの海』販促用のPVは、平野による企画・原案・構成・出演という取り決めの上で制作されたため、演出を担当する筆者は撮影監督を託した石崎俊一を同伴し、毎週のように平野の邸宅にある広々としたバルコニーで密を避け、緩やかに打ち合わせを進めてきた。ところが、いざ撮影となると誰よりも早く現場に入ってあれこれと演出に口を挟み、梅造社長との対談撮影では段取りを一切無視して突如パンチを放ってしまったり、海辺のロケ撮影では30分近くも行方不明となってしまった挙句、ロケバスから何キロも離れた砂浜で発見されたりと、無意識にスタッフ一同が蒼ざめてしまうような不可解なパフォーマンスを披露してしまうのだった。

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