日刊サイゾー トップ  > 【Netflix】意味不明だったスパイク・リーのメッセージ
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90年代、スパイク・リーは『マルコムX』のキャップだった! 挫折した人が『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見るべきわけ

世界でもスパイク・リー=ジョーダンとCMに出ていた人のイメージ

90年代、スパイク・リーは『マルコムX』のキャップだった! 挫折した人が『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見るべきわけの画像2
スパイク・リー(左)とマイケル・ジョーダン(右)。(写真/Getty Imagesより)

大室 多分、そこをいち早くキャッチアップしていたのが、高城剛でした。『バナナチップス・ラヴ』(91・フジテレビ)っていう、松雪泰子が主演で全編ニューヨークロケのドラマを撮ってたの。音楽担当が藤原ヒロシで、テーマ曲がORIGINAL LOVE の『月の裏で会いましょう』というラインナップだからね。あの頃のちょっと変な人がたくさん集まって、『ドゥ・ザ・ライト・シング』の持つ冗長さをポップに切り取ったのが高城剛だったというわけ。要は当時の日本では、海外のポピュラーカルチャーを運んできてはサブカルに変換する人たちがいっぱい居て、その影響力が強すぎて、スパイク・リー=サブカルアイコンになっちゃった。だからその頃の僕らは、そのサブカル映えするセンスに引っ張られスパイク・リーが本来持ってる「テーマ性」とか「メッセージ性」に気付かなかった。そのあともHIPHOPユニットのラッパ我リヤが『Do The Gariya Thing』(00)って曲で、ジャケットも『ドゥ・ザ・ライト・シング』をまんまサンプリングしてたり、常にサブカルアイコンとして使われてきたイメージなんだよね。

 で、実際はどういう映画監督だったかだけど、多分『ドゥ・ザ・ライト・シング』はアメリカの映画史上、もっとも“固有名詞”が並んでる映画じゃないかと思っていて。当時のストリートでいけてるものが、あの映画に詰まってるみたいな感じ。固有名詞を並べることで、その映画の持つ世界観を伝えるっていうのは、すごくサブカルオタクが好きなジャンルじゃん。でも『ザ・ファイブ・ブラッズ』を見て、あの人はタランティーノや庵野秀明などのオタク親和性の高い監督とは違って、テーマ優位型の監督だったんだなっていうのが今回、改めてわかったんですよ。

 サブカルアイコンだと思ってた人が、実は真面目なテーマ主義者だったってところで言うと、タランティーノや庵野さんというより、いとうせいこうさんに近い。ここらへんが今回最初に思ったところなんだけど……もしかして、すでにうるさいですか?

伊丹 いやいや……映画製作の外側からの視点で、90年代からの日本独特のスパイク・リー受容をそこまで分析するのは、おもしろいですけどね。確かに当時彼が、サブカルアイコンだったっていうのは、事実ですよね。実はアメリカでもキャラ先行だったみたいで。本人も証言してるけど、彼が最初に世に知られたのはマイケル・ジョーダンとCMに出たことなんですよね。自らが「ドキュメンタリーを撮ってる」って言って一般の人たちと会話しても映画監督としてわかってもらえないことが多いと。でも「ジョーダンとCMに出てた」って言ったら、みんなわかるらしいんですよ。自分も当時、“黒人問題に正面から向き合って描く難しい監督”なんだってことは何となく分かってたんだけど、タランティーノの仲間だと思ってたような部分はありますよね。

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