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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.610

愛ではなく、いい加減さが閉塞した世界を救う! 山本政志監督のトリップ映画『脳天パラダイス』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

愛ではなく、いい加減さが閉塞した世界を救う! 山本政志監督のトリップ映画『脳天パラダイス』の画像1
合法的トリップムービー『脳天パラダイス』。頭のネジが2~3本抜け落ちること確実。

 脳内一面に、ぱぁ~とお花畑が広がるような感じ。山本政志監督の久々の新作映画『脳天パラダイス』をひと言で説明すると、そんな感じ。頭の中に色とりどりのお花たちが咲き乱れ、楽しければもうそれだけで充分じゃないですか。もっと、みんな「いい加減」になりましょうよ。上映時間95分を、『脳天パラダイス』は“観るドラッグ”として楽しませてくれる。

 主人公一家のお父さん・修治には、小説『想像ラジオ』が高く評価されたマルチクリエイターのいとうせいこう。恋多きお母さん・昭子には、『葛城事件』(16)などのシリアス演技から180度転換した南果歩。ニートの息子・ゆうたは、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)で少年ゲリラを熱演した田本清嵐。大騒動の火種となる末娘・あかねに、オーディションで選ばれた小川未祐。また、山本政志監督が見つけたいい感じの外国人やミュージシャン、大道芸人らも多数出演している。プロとアマが渾然一体化したお花畑ムービーだ。

 物語はいたってシンプル。東京郊外の大きな邸宅で暮らしていた修治(いとうせいこう)たち一家は、修治が株の投資に失敗したことで家を出ていくことになった。引越し当日、息子のゆうた(田本清嵐)は、庭をうろついているホームレスふうのじじい(柄本明)や野良猫を相手にのほほんとしている。シビアな現実を直視しようとしない父や兄に、末娘のあかね(小川未祐)はプチ切れ。ツイッターで「今日、パーティーしましょう。誰でも来てください」と投稿する。

 あかねがふて寝している間にツイッターは広まり、男をつくって家を出ていった母親の昭子(南果歩)、結婚式を挙げたいというゲイのカップル、台湾から来た観光客の母子らが集まる。あかねの友達、運送業者も加わり、慎ましく始まった宴会は次第に盛り上がっていく。

 ホームレスじじいがすでに息をしていないことが分かり、ゲイカップルの結婚式とじじいの葬式を同時に行なうことになる。屋敷の近くにはケシの花が植生しており、ノリのいいパーティーに気をよくした大麻愛好家がご焼香の代わりにマリファナを焚き始める。庭一面に甘~い匂いが立ち込め、かつてない空前のどんちゃん騒ぎへと発展する。常識と非常識、エロスとタナトス、愛と憎しみ……、性別も国籍もあらゆるものはボーダーを失い、呑めや歌えやのお花畑パラダイスが広がっていく。

 

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