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ヨルシカ、YOASOBI…第2次ボカロ小説ブーム! かつて中高生がハマったカゲプロとは何が違う? 

「ボカロ文芸」になったが「世界の終わり」はある

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『カゲロウデイズ -in a daze-』(KCG文庫)

 この差異は、ビジネス的にはどう解釈できるか。第1次ボカロ小説ブームは15年頃を境に終わったと書いたが、例外的にカゲプロとHoneyWorksの(以下、ハニワ)『告白予行練習』(角川ビーンズ文庫)は中高生に支持され続けている。「学校読書調査」を見ると、この2作品は中高生(後者は女子)が読んだ本の上位に10年代後半以降も食い込んでいる。つまり、本を読む中高生にはカゲプロとハニワは今も認知されているのだ。

 これを踏まえるなら、『盗作』『夜に駆ける』『あの夏が飽和する。』のパッケージデザインが一般文芸風になっているのは、こうした作品が、カゲプロやハニワのキャラ然とした装丁が年齢的ないし趣味嗜好的に子どもっぽく見える層を向いているからだろう。第1次ブーム発の作品とは異なるセグメントがターゲットということになる。

 隣接ジャンルの動きから類推するなら、もともとは中高生中心に読まれた「ライトノベル」から大人向けの「ライト文芸」が派生したように、第2波作品は、中高生向けの「ボカロ小説」から派生した、精神年齢がやや上向けの「ボカロ文芸」になっている。

 ただし、『盗作』の主人公は窃盗犯を経てパクリで生計を立てる音楽家であり、『夜に駆ける』収録の作品は「自殺」や「世界の終わり」がモチーフだ。また、『あの夏が飽和する。』は養護施設育ちの主人公が逃避行の果てに自殺した想い人の幻影を追い、出会い系で知り合った少女に想い人を重ねるという話。このように第2波作品も、過剰で過激な感情表現がウケるボカロ文化特有のコードに基づくものに見える。外形的には一般文芸やJ-POPに近づき、やや異なる層を対象としているとしても、実質においてやはりこれらは「ボカロ(文化発の)小説」なのだ。
※「月刊サイゾー」11月号より一部転載。全文は「サイゾーpremium」でお読みいただけます。

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2021/01/06 09:00
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