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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.619

クローネンバーグ監督が描く変態夫婦の純愛物語! 交通事故に興奮する危険な映画『クラッシュ 4K』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

濡れた性器のように、なまめかしく光る車のボディ

クローネンバーグ監督が描く変態夫婦の純愛物語! 交通事故に興奮する危険な映画『クラッシュ 4K』の画像2
『ピアノ・レッスン』(93 )のオスカー女優ホリー・ハンターが、危険な世界へといざなう。

 未亡人ヘレンと交際するようになったジェームズは、秘密のサークルに参加することになる。全身キズだらけの男・ヴォーン(イライアス・コティーズ)が主宰する「クラッシュマニアの会」では、有名人の過去の事故死の瞬間をカースタントを使って会員限定のショーにしていた。24歳の若さで亡くなったジェームズ・ディーンの死亡事故を、ディーンが乗っていた同じ型のポルシェを用意して、リアルに再現してみせる。事故当時と同じように、シートベルトもヘルメットもなしで、だ。ポルシュがクラッシュする瞬間、ショーを見守っていた会員たちは歓喜の声を挙げずにはいられなかった。

 怪しいカリスマ性を放つヴォーンは語る。「交通事故は破壊的な出来事ではなく、生産的な出来事だ。事故の瞬間に、膨大な性的エネルギーが解放されるんだ」と熱弁を振るうヴォーン。超が付くほどのキチガイだ。ヘレンは「カークラッシュマニアの会」にすっかり溶け込んでいた。夫を亡くした事故以降、ヘレンはジェームズ以外の男性たちともカーセックスを体験していた。他にも深い裂傷を負った脚を拘束具で覆っている美女・ガブリエル(ロザンナ・アーウィック)ら、訳ありそうな会員たちが集まっていた。ヴォーンの狂気に、ジェームズは次第に感染し、ジェームズを介して、妻のキャサリンも巻き込まれることになる。

 クローネンバーグ監督自身、若い頃はアマチュアのカーレーサーだった。スピードがもたらす官能の世界に取り憑かれた青春を送っていた。マシンと人間が一体化することに無上の喜びを感じる種族の撮った映画だけに、アブノーマルさが作品全体に満ち満ちている。車のボディは、濡れた性器のようになまめかしく光る。ジェームズは、鉄のボディに覆われた車の中でないと、女性を抱くことができない。女性を抱くというよりは、車そのものと性行為をしているようだ。ヘレンとガブリエルの美女2人は、車の狭いバックシートにすっぽりとハマって抱き合う。双子の姉妹が、母親の子宮の中で仲良く一緒に眠るかのように。

 走行中の車と車が接触するシーンは、まるで全力疾走する人間同士が愛し合う姿のように映る。このシーンは、細田守監督の劇場アニメ『おおかみこどもの雨と雪』(12)を彷彿させた。『おおかみこども』に登場するオオカミ人間である雪と雨の姉弟は、オオカミに変身し、じゃれあいながら原っぱを駆け回った。雪と雨のじゃれあいは姉弟同士のコミュニケーションとして描かれていたが、『クラッシュ』では車という日常的なアバターを使って、ジェームズとヴォーンは男同士で激しく愛を交わし合うことになる。車と一体化すれば、そこには性別は存在しない。スピードを加速すれば窓の外の景色が流れて消えていくように、ヴォーンたちの運転する車からも世間の常識は瞬く間に後方へと消えていくことになる。

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