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舐達麻がブチかますコンプラ無視の“超”大麻論──なぜ「たかだか大麻 ガタガタぬかすな」とラップするのか

「たかだか大麻」の本当の意味とは?

舐達麻がブチかますコンプラ無視の超大麻論──なぜ「たかだか大麻 ガタガタぬかすな」とラップするのかの画像3

──舐達麻は、かつて大麻を売りさばいてきた事実を赤裸々にラップしています。

B なんで俺が「たかだか大麻 ガタガタぬかすな」ってラップするかというと、中学の頃から犯罪行為に手を染めて、常に“対警察”で生きてきたから。盗んだナンバーを付けた車に乗って遊びに行ったり、人をブッ飛ばして金を奪い取ったり、金庫泥棒をしたり、すべてが犯罪でリスクしかない。そんなことをするのは、俺らが田舎の不良のガキでアホだったから。だけど、ただのアホじゃない。別に今振り返ってそういう犯罪を肯定するとかはないですけど、すべてのリスクを理解した上で犯罪をしていた。俺らにはそれしかなかったし、それが生活だった。だから、大麻を売りさばくのはなんてイージーな犯罪なんだってとらえ方だった。なぜなら、仮に今、俺がここで大麻を吸っても、大麻取締法では所持罪しか問えず、使用については処罰できないから、吸い切れば逮捕されない。もしくは、売り切って手元になければ証拠もない。しかも、言い古された意見ですけど、大麻を売ったところで誰も傷つけない。それで「たかだか大麻」なんです。

──なるほど。

B 今はもう売人じゃないですけど、かつて大量に売りさばき始めた頃に日本のハスリング・ラップを聴くようになって、マリファナを売ることをハスリングって表現すること、ヒップホップとマリファナが密接な関係にあることも知った。そうしたラッパーの人らには超リスペクトしかないんですけど、あえて言わせてもらうと、「0・8で売る」とか「1グラムで売る」みたいな歌詞があってマジで驚いた。10歳ぐらい上のラッパーが、俺らよりレベルの低い、そんな量のディールの犯罪をラップして、「日本語ラップの最前線」とか評価されていたから。「これでギャングスタって言えるの? 俺らのほうが絶対ヤバい」って思ってた。ガキだったんでそういう見下し目線から入ってるけど、確信にもなりますよね。俺らは、大麻と出会う前からヒップホップが大好きな子どもだったし、カッコいいラッパーが大麻について歌ってることで、俺らの人生も間違いなくヒップホップなんだって思えた。

G だから昔も今も、ヒップホップを取り扱っているのに、ウィードについて一切触れないメディアはクソだと思ってますね。

ライブで“焚いた”のは警察と客への意思表示

──一方で、大麻については法律の問題を避けて通ることはできないですよね。大麻を通じてアメリカの歴史を再解釈したNetflixのドキュメンタリー『グラス・イズ・グリーナー』(こちらの記事参照)は体制側の思惑や人種差別などによって大麻が犯罪化されてきた歴史が描かれている。現在は世界の一部の国・地域では大麻解禁・非犯罪化の方向に進んでいますが、日本の法的状況はいまだ厳しい。BADSAIKUSHさんとDELTA9KIDさんは大麻取締法違反で逮捕されて有罪になり、刑期を務めた経験があります。BADSAIさんは「この国はいくらか遅れている 情報や溢れているbush」(「SPACE BALL」)ともラップしています。

B ちょっと前は日本でも合法になってほしいと考えていました。それは、日本では間違った情報と法律で大麻や人を不当に抑え込んでいるし、そういう情報と法律による人々の勘違いがなくなれば日本でも合法になると思っていたから。でも、今はある意味どうでもよくなってしまった……。というのも、第2次世界大戦後にGHQが日本政府につくらせた大麻取締法はおかしいとか、日本には麻の伝統文化があるとか、人の体にいい効果があるとか、そんなのはみんなとっくに知っている。それでも、いろんな利権や思惑があって大麻は禁止されている。だから、俺らが今すぐにどうにかしようとしてもキリがない。

──大麻の犯罪化を人権問題――つまり自由、人権、感性の侵害という観点から非犯罪化や解禁を訴える主張があります。それについては、どう思いますか?

B 憲法を前にして争ったら、本来は大麻を禁止しているほうが絶対に勝てないじゃないですか。だって、日本国憲法第13条に「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」という規定がありますからね。ある人が「俺は大麻を吸って幸福を追求している」って主張したら、もうそれで決着しているはず。だけど、現実はそうじゃない。検察が大麻取締法で誰かを起訴したら、ほぼ確実に有罪になる。だから、大麻で逮捕されても、たいていのヤツは憲法を持ち出して争わない。それは大麻の問題ではなく、司法の問題だから。

──真実を追求して闘っても、法律はすぐには変わらないと。

B 『マリファナ・ハイ』なんて何十年も前の本じゃないですか。わかっている人は何十年も前からわかっている、わかろうとしない人はいつまでもわかろうとしない。同じ人類でも、わかり合えないようにされているなって気づいた。でも、人類の長い歴史から考えれば、大麻が非合法なのはせいぜいこの100年ぐらいで、そういうまれな時代にたまたま俺らが生きているって考えることもできる。国家権力には簡単に敵わないけど、いつかは日本でも合法になりますよ。

──とはいえ、19年12月に新宿であったライブ で“焚いた”のは、覚悟の抵抗と受け取れました。かなりの決意があったのでは?

B 当然、決意はありました。絶対に会場にデコ(警察)が来ていると思ったから、そんなに「大麻は悪い!」って嘘をつくのであれば、俺らはラッパーだし、ちょっとは大げさに意思表示するよって。客に向けては、本当にこれぐらい身近にあるからって知らしめたかった。

G そういうやり合いだよね。

B 俺らの仕事は、大麻と真剣に向き合って自分を磨き、芸術をどんどん良くしていくこと。今みたいに多くの人たちから求められていない頃から、それを生き甲斐に生きてきたんで、今は幸せでしかない。

G だけど、そういうスモーカーになるには時間がかかる。大麻と向き合って落ちるか、伸びるかは人によるから。

B ハイグレードのウィードは、一度も吸ったことのないヤツが吸ったらブリブリになってゲロ吐くし、そういう強力なものであるのは事実で、大麻がいいのか悪いのかっていう議論が起きるのは当然。俺が大麻をすぐにでも合法化すべきと考えていたのは、みんなが何かしらの芸術を極めるべきだと考えていたから。

D 大麻と向き合うことで深く考えることができる。リリックを書くのに集中して、ひとつの事柄からいろんな言葉を生み出せる。

──DELTA9KIDさんには、大麻を女神に喩えた「女神と交わる」(「GOOD DAY」)というリリックがあります。

B それは、俺らにとってウィードが神秘的なものだからです。

D そうだね。

B 大麻と向き合ってリリックを書くときは、人との対話とは違って言葉による問いじゃない。ビートが問いになって、答えが自分の中から湧き出てくるんです。

──答えという言葉が出ましたが、以前のあるインタビューで、将来は大麻が合法の地域に行って大麻農家になりたいと語っていました。今の夢はどうですか?

B 変わっていないですね。超汚いTシャツと短パンみたいな格好をして、じょうろを持って極上のウィードを育てているオッサンになりたい。そんな見た目で何千億も稼いで、超ブリンブリン(高額でド派手なジュエリー)を付けて、「昔はこんな音楽をやってたんだぜ」って周りの若いヤツに舐達麻のレコードを聴かせる(笑)。

G 俺は「HIGH TIMES」の表紙になって、ウィードのアイコンになりたい!

D 誰も傷つけていないんだから、自由にさせてくれって感じですね。

(文/二木信)
(写真/西村満)

舐達麻(なめだるま)
埼玉県は熊谷をレペゼンする話題のラップ・グループ。BADSAIKUSH、DELTA9KID、G-PLANTSという3人のラッパーからなる。APHRODITE GANGというクルーも率いる。これまでリリースした作品に『NORTHERNBLUE1.0.4.』(2015年)、『LIMITERCUT3』(18年)、『GODBREATH BUDDHACESS』(19年)がある。

最終更新:2021/01/30 11:00
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