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本当にみんなのお金で支えるべき「公共放送」なのか? 有馬哲夫が訴えるNHK受信料“不要”論(前編)

NHKが唱える「公共放送」とは何か?

 これは受信料の抜本的改正だが、このような改正案を出すと必ずNHKが唱えるプロパガンダがある。「NHKは公共放送だから、みんなが受信料を払って支えなければならない」。そこで、以下では「NHKは本当に公共放送か」について考えてみよう。

 NHKは自ら「公共放送」と名乗る。そして、ほかの放送局を「民放さん」という蔑称で呼ぶ。では、NHKと「民放さん」の違いは何か。NHKはCMが入っているかいないかだという。
ところが、世界ではCMを流している「公共放送」が珍しくない。これは高橋氏も指摘している通りだ。あの中国の国営放送(実際は共産党営だが)の中央電視台ですらCMを流している。したがって、CMの有無は「公共放送」であるかどうかとは関係ない。

 あるいは、NHKは「公共の電波」を使っているから「公共放送」だと勘違いしている人がいるかもしれない。しかし、「公共の電波」を使っているのはNHKだけでなく、「民放さん」もだ。これにNTT、ソフトバンク、KDDIも加えてもいい。

 電波は「国民共有の有限な資産」、つまり「みんなのものだが有限なもの」である。だから「公共の福祉に資する」(みんなのためになる)事業を行うものに使用する免許を与え、ほかのものには使用を禁止する。この考え方は占領中にアメリカからもたらされた。憲法と同じく、放送法の原案を作ったのはGHQだ。

 この「公共の福祉に資するか」を判断し免許を発行することを電波監理といい、日本では現在、総務省の情報流通行政局が行っている。「民放さん」もケータイ会社も、私たちに必要な情報と便宜を与えている。だから、総務省から「公共の電波」を使う免許を取得している。

 NHKは自らを公共財だというが、それなら「民放さん」もケータイ会社も公共財だといえる。ただ、彼らは受信料に頼らずに、事業収入によって会社を成り立たせている。「公共の電波」を使うから「公共放送」だという人は、「公共の電波」の意味を知らないのだ。

 よくNHKは災害放送に強いと自己宣伝する。これはまったくのナンセンスだ。私は東日本大震災を経験したが、被災後5日間はラジオもテレビも見ることができなかった。電源がないのだから当たり前だ。人々が連絡を取り、情報を集める手段に使ったのは、ケータイのメールと口コミだった。これは、地震だろうと洪水だろうと同じだ。NHKの災害報道は、他人の不幸を高みの見物をするためにある。被災者自身には、なんの役にもたたない。

 NHKの「2019年11月全国個人視聴率調査から」のデータを基に計算すると、視聴者の全視聴時間に占めるNHKの番組の割合は30%にすぎない。70%は「民放さん」だ。「公共」とは「大多数」の意味もあるのだから、NHKはとても「公共放送」とはいえない。(後編につづく)

●プロフィール
有馬哲夫(ありま・てつお)
1953年生まれ。早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(メディア論)。著書に『NHK解体新書』(WAC)、『日本テレビとCIA』(新潮社)、『こうしてテレビは始まった』(ミネルヴァ書房) などがある。

最終更新:2021/02/05 18:00
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