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野党の停滞と、言葉が死んでる総理大臣 中島岳志が見る2021年衆院選の行方

文=萩原雄太(はぎわら・ゆうた)

野党の停滞と、言葉が死んでる総理大臣 中島岳志が見る2021年衆院選の行方の画像1
中島岳志氏。

 政治学者・中島岳志氏を迎えた本インタビュー。前編「『選挙に行こう』だけでは意味がない 中島岳志が考える政治の本質」では、最新刊『自分ごとの政治学』(NHK出版)で描かれた中島氏の考える「政治と宗教心」や、政治を「自分ごと」にするための方法を聞いた。

 この後編では、本の内容から離れ、今年の秋までに行われる総選挙に焦点を当てながら話をうかがった。ここ数年、2017年の衆議院選挙での立憲民主党ブーム、19年の参院選におけるれいわ新選組の躍進といった現象が見られた国政選挙。はたして、次の総選挙では、どのような対立軸が描かれるのだろうか?

山本太郎にしかできなかったこと

──後編では、今年予定されている衆院選についてお話をうかがっていきます。前編で「選挙に行くだけが政治ではない」と語っていただいたものの、やはり、国政選挙は国の行く末を決める大きなイベントです。中島さんは、どのような形で今年の衆院選に注目されているでしょうか?

中島:『自分ごとの政治学』の中にも記しましたが、今、左右の軸では政治を捉えられないと考えています。そこで、重要になってくるのが、「お金」と「価値」の軸。左派・右派という対立ではなく、この2軸によるマトリクスで捉えていくと、今の政治の流れはわかりやすくなります。

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──セーフティネットを拡充するリスクの社会化か、税金を引き下げる代わりに生活におけるリスクを個人が背負うリスクの個人化かという「お金の問題」と、夫婦別姓やLGBTQといった価値観に介入するパターナルか、それぞれの人々に任せるリベラルかという「価値の問題」ですね。

中島:このマトリクスに分類することによって、自分の考えに近い政党や政治家を捉えることができます。自民党はもともと多様な価値観の人々が在籍していた政党ですが、第二次安倍内閣以降の10年で、④(リスクの個人化・パターナル)の部分に固まり、その価値観はどんどんと狭くなっている。

 そのなかで、例外的に②(リスクの社会化・リベラル)の価値観を持っているのが石破茂や野田聖子といった政治家です。石破氏は80年代の中曽根内閣のときに初当選をしているし、野田氏が当選した93年の選挙のときは宮沢喜一が総裁、河野洋平が官房長官という時代でした。この時代、今とは異なって、自民党の中枢はリベラルの側に傾いていたんです。このゾーンこそが「保守本流」と言われていました。

──自民党が④(リスクの個人化、パターナル)に傾きつつある一方で、野党の側はどうでしょうか?

中島:自民党に対する対立軸として、野党は②を選ぶべきでしょう。それによって、国民の選択肢となります。そこで、②の軸に立ち上がったのが枝野幸男の立憲民主党でした。その対立軸が明確だったからこそ、立憲民主党は旧民主党を上回る人気を獲得したんです。しかし、枝野氏は当初、熟議型の意思決定を標榜していたにもかかわらず、だんだんとトップダウンで物事を決めるようになってしまい、支持が失われていきました。

 そこに登場したのが山本太郎のれいわ新選組でした。彼は、左派ポピュリズムの立場から人々の感情や情動を喚起することによって、これまで選挙に行かなかった人や政治に関心を持てなかった人にアプローチをしていき、2人の国会議員を送り出しました。

──しかし、山本氏の都知事選出馬以降、世間の注目が離れ、勢いがなくなりつつあるように感じます。

中島:れいわの支持が離れていった背景には、党内をうまく調整することができなかったことにあると思います。党内の調整不足から、「命の選別」発言をした大西つねき氏の除籍処分をはじめとする問題が浮かび上がってしまった。それが、失速に繋がってしまったのでしょう。

 次回の衆院選でも、枝野氏、山本氏は引き続き鍵を握る人物であることは間違いない。しかし、残念ながら今のところ、どちらとも野党のシンボルになりきる勢いがありません。野党側にとっては、難しい戦いを強いられる選挙になるのではないかと考えています。

──そんなシンボル不在の中、野党が取るべき戦略は何でしょうか?

中島:有権者に「野党が政権を取ればこういう世の中になるんだ」「自民党よりも希望があるんだ」というビジョンを示すことでしょうね。今、野党の側からは、そのようなビジョンが全く見えてこない。だから、有権者も支持をすることができないんです。特に、立憲民主党は、物語の作り方が下手だと感じますね。

 選挙を戦うにあたって、いちばん大切なのは物語を示すことです。人は断片的な政策では動きません。多くの人が山本太郎を支持したのは「消費税減税」という政策を掲げたこと以上に、政治から排除された人に「この人に賭けたら、違う世界を見せてくれそう」「自分たちの側に立って政治を行ってくれる」という物語を喚起したから。

 ポケットにわずかしかお金が入っていない人が、そのお金を寄付していった。これはこれまでに見られなかった画期的な光景でした。山本太郎が起こしたムーブメントには、非常に重要な価値があります。「消費税減税」という個別的な政策以上に、物語が支持されたことが大きかった。ここを読み違えてはいけないと思います。

──一方、昨年9月から総理大臣になった菅義偉総理大臣についてはいかがでしょうか?

中島:支持率が下がり続けている菅総理大臣のままで選挙となれば、自民党にとっては負けの選挙となるでしょう。その一方で、立憲民主党は、少しだけ椅子が増える。しかし、そんな微妙な増減だけでは、本質的に現在と変わりません。

 もしも、そんな流れが変わるとすれば選挙前に菅内閣が退陣し、別の総理大臣が誕生すること。菅総理が退任し、石破茂、河野太郎、野田聖子といった人々が新たなトップになれば、新しい物語が起動し自民党の支持率は上がる。そうして解散総選挙を迎えれば野党は苦しい戦いを強いられるでしょう。

 

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