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野党の停滞と、言葉が死んでる総理大臣 中島岳志が見る2021年衆院選の行方

文=萩原雄太(はぎわら・ゆうた)

菅総理の言葉が響かない理由

野党の停滞と、言葉が死んでる総理大臣 中島岳志が見る2021年衆院選の行方の画像3
『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)

──選挙を離れて、政治の問題として中島さんが注目している点はありますか?

中島:政治家の言葉に注目していますね。コロナを抑え込んでいるのは、中国や台湾などの権威主義的な国家か、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相のように言葉を持っているリーダーがいる国家です。誠実な言葉によって、リーダーと国民とが信頼関係で結びつく。その結果、感染をおさえることに成功し、経済を回しています。

一方、菅義偉総理大臣の言葉は原稿の棒読みに過ぎず、それすらも言い間違えてしまう。彼の言葉では、全く信頼を生み出すことができません。

──なぜ、菅総理には、信頼を生む言葉が生み出せないのでしょうか?

中島:かつて、哲学者の井筒俊彦は、言葉には「言葉」と「コトバ」の2種類があると話していました。私たちが通常使っているのは「言葉」。一方、表情や声の震え、声を出す上での真剣味などによって現れるコトバからは、人間の内側から湧き上がってくるものが伝わってくる。コトバによって、本当に他人と通じ合うことができます。

 しかし、菅総理の発言にはコトバがありません。その理由は、彼が、これまで言葉によって人を動かすような仕事の仕方をしてこなかったから。彼は、これまでの政治家人生において、人事や見せしめ、懲罰などによって人をコントロールしてきた人物です。彼の言葉に人々が動かされないのは、彼がこれまで辿ってきた人生の帰結なんです。

──では、中島さんが「言葉」の上で注目する政治家はいますか?

中島:与党の政治家では、石破氏の言葉に注目できるのではないかと思います。彼自身は、もともとプロテスタントであり、強い信念がある人です。また、絶対的な力を持っているのは神であり、人間である自分は間違いやすい存在であると認めている。絶対的な神からの眼差しを受けながら、人間の能力の限界を感じ、反省的な態度を保つのは、エドマンド・バーク(18世紀に活躍した「保守思想の父」と呼ばれるアイルランドの政治家)をはじめ、ヨーロッパの保守主義者が持つ思考の形式です。

──石破氏はどのような反省に至ったのでしょうか?

中島:かつて、彼は新自由主義的な思想を掲げていました。しかし、安倍内閣で地方創生大臣を担当しながらアベノミクスでは日本の経済は疲弊していくだけであり、再分配が重要であることに気づいた。この間違いを反省し、新自由主義的な方針を転換するに至っています。自分自身の間違いに気づき、反省し、修正する。これを実践している石破氏は、成熟した言葉を使える保守政治家になりつつあると考えています。

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(プロフィール)
中島岳志(なかじま・たけし)
1975年大阪府生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ヒンディー語専攻卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了、博士(地域研究)。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現職。専門は南アジア地域研究、日本思想史、政治学、歴史学。主な著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社、日本南アジア学会賞)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『ガンディーに訊け』(朝日文庫)、『保守と大東亜戦争』(集英社新書)、『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)、『自分ごとの政治学』(NHK出版)など多数。

萩原雄太(はぎわら・ゆうた)

萩原雄太(はぎわら・ゆうた)

演出家・劇作家・フリーライター。演劇カンパニー「かもめマシーン」主宰。舞台芸術を中心に、アート、カルチャー系の記事を執筆。

Twitter:@hgwryt

ライター実績ページ

最終更新:2021/02/09 07:00
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