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BTSジョングクのタトゥーは「魂の発露」か──芸術性と法規制から考える韓国タトゥーの現在地

タトゥー市場は1兆ウォン! 美容大国ならではの問題も勃発

BTSジョングクのタトゥーは「魂の発露」か──芸術活動と法規制から考える韓国タトゥーの現在地の画像3
BTSジョングクが入れたタトゥーの意味を考察するファンも多い(Getty Images)

 もっか韓国彫師たちの課題は、国内の法整備だ。日本でも2015年に大阪で医師免許を持たずにタトゥーを施したとして彫師が摘発された件で、5年にわたる裁判の末、昨年9月に最高裁で無罪が確定したばかりだ。

 医師免許は必要ないとする日本の司法は「タトゥーの施術は、装飾や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきた。美術に関する知識と技能が必要で、歴史的にも医師ではなく彫師が行ってきた実情がある」と判決を下した。2019年には彫師による業界団体『一般社団法人 日本タトゥーイスト協会』も設立されている。

 韓国でもタトゥーがブームになった2010年から彫師の協会がいくつか立ち上がったものの、問題を複雑にさせているのは「半永久化粧」といわれているアートメイクである。美容整形がポピュラーなものになり、美容医療機関はさまざまなメニューを充実させてきた。その結果、医師によるアートメイクと民間によるアートメイク、双方ともに多くの技術者がおり問題が解決されていないまま混迷を極めている。

 タトゥーの彫師たちまで医療法27条に抵触するとして、医師免許がなければ7年以下の懲役、又は1000万ウォン(約94万円)以上、7000万ウォン(約660万円)以下の罰金に処するとされている。

 現在、韓国のタトゥー市場は1兆ウォン(944億円)に迫るとの報道もあり、彫師たちは“タトゥーイストは正当な労働者”というスローガンのもと、政府と法整備の話を進めるべく早期解決に向けて奮闘中である。BTSが国民的スターからグローバルスーパースターになった今、彼らの名誉のためにもタトゥーに特化したルールが確立され、韓国のタトゥーシーンに明るい兆しが見えるのを願ってやまない。

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Tattoo by Baam(@baam.kr

 近年、日本の若い子のなかでも流行に敏感なタイプは、韓国へ行き、韓国の彫師にタトゥーをオーダーする人が増えはじめている。

 タトゥーアーティストたちにとってインスタグラムは、世界中の人に作品をアピールするポートフォリオとなっており、予約もインスタグラムのDM、またはカカオトークなどのメッセンジャーアプリが主流である。翻訳アプリを使えばスムーズにコミュニケーションをとることも可能だ。

 世界的パンデミックが終息した近い将来、韓国でコスメやファッション、グルメを満喫するように、タトゥートリップも人気になると予測される。コリアスタイルのような小さいサイズのタトゥーなら、30分から1時間もあれば完成してしまう。世界で1つだけのアクセサリーを購入する感覚に近く、アイドルの「推し活」がてら、旅の思い出に韓国でタトゥーを入れるのも楽しみのひとつになるだろう。

 さて。今回はBTSのジョングクのタトゥーを発端に、3回にわたり「韓国のタトゥー事情」について解説したのだが、世界を席巻する彼らの快進撃と同様、韓国のタトゥーカルチャーは旧態依然とした社会さえも変貌させる勢いだ。

 とりわけ日本のファンからはタトゥーが増えていく姿に心配を寄せる声もあるが、今後もジョングクのタトゥーは彼の芸術表現の一部として注目されていくことになるだろう。タトゥーは魂の発露である。彼の内面から輝くパフォーマンスを楽しみながら、心の成長と共に一流のエンターテイナーにふさわしいタトゥーを選んでいくことを祈るばかりだ。

 最後に。若者の間でタトゥーは、ひと昔前のように“覚悟”とか“一生背負う”といった重たいものではなくなったとはいえ、老婆心ながら日本で暮らしている人には、ファーストタトゥーは服を来たときに他人から見えない箇所に施術することをオススメする。

川崎美穂(編集者)

1973年、青森県出身。1996年より雑誌『BURST』の編集に携わり、1999年本邦初のタトゥー専門情報誌『TATTOO BURST』を創刊。雑誌が休刊する2012年まで編集長を務める。現在はフリーランスとして各種メディアのタトゥー企画を担当している。賛否はあれど、タトゥーは〝過去・現在・未来を知る〟貴重な情報媒体であるというのが持論。

Twitter:@koumebooks

かわさきみほ

最終更新:2022/08/02 18:51
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