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新型コロナワクチン接種開始も“優先者区分”が不明瞭な点だらけ… 肥満体型は優先、警察官は除外

基礎疾患の証明は自己申告!? ワクチン摂取には不明瞭な点が多すぎる?

 第3グループの「基礎疾患を有する者」にも不明な点が多い。基礎疾患として厚労省HPに13項目の病気や症状が提示され、それによって「通院、入院している」ことが条件になっている。

 まず、この基礎疾患を持っているかをどのように把握するのかだ。患者の病症は病院にとっては個人情報の最たるものであり、これを提供することは難しい。従って、基礎疾患の証明は、「書類などは不要で、自己申告」としている。

 これでは、誰でもが基礎疾患があると言って、優先的にワクチン接種ができることになってしまう。

 さらに、13項目の病気や症状に該当しないケースは、どのようになるのか。例えば、がんなどの大病を治療後、再発の経過観察中の人はどうなるのか。基礎疾患の定義があまりにも曖昧過ぎるだろう。

 その上、基礎疾患と同様に「基準(BMI 30 以上)を満たす肥満の方」が優先接種の対象となっている。

 BMIは「ボディ・マス指数」と呼ばれ、「体重÷身長の2乗」で算出される。この数値が30を超えると「高度な肥満としてより積極的な減量治療を要する」とされている。BMIが30となるのは、身長160センチで体重76.8キロ、170センチで86.7キロ、180センチで97.2キロだ。

 ところが、何故、BMIが30を超える人が優先接種の対象となるのかについては、どこを探しても明確な説明はない。太っていることは、それだけで優先接種の権利があるのだ。

 ワクチン接種の優先順位以外にも、不明な点がある。例えば、厚労省HPではワクチン接種は「強制ではありません」と明示しており、ワクチン接種を実施する医療機関向けマニュアルには、「有効性・安全性、副反応、予防接種健康被害救済制度について説明を行い、“文書により同意を得た場合に限り”接種を行う」と書かれている。

 もし、ワクチン接種による健康被害が発生した場合には、「予防接種健康被害救済制度」が適用される。同制度は「健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定した時」に適用されるが、認定に当たっては、「第三者により構成される疾病・障害認定審査会により、因果関係に係る審査」が行われる。

 因果関係が認められれば、医療費、医療手当(通院、入院の費用)、障害年金・障害児養育年金、死亡一時金、葬祭料、介護加算が支払われることになる。現在の死亡一時金は4420万円だ。

 そして、「文書による同意書」はワクチン接種と健康被害の因果関係、健康被害に対する政府補償を問う場合(例えば、民事訴訟)に、政府にとって非常に有利な材料となるだろう。

 これからワクチン接種を進めるにあたり、政府はこうした優先順位や健康被害に対する疑問について、明確に説明する義務を負っている。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/03/04 17:00
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