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「割増罰則金」導入も企むNHKは公共放送ではない! 国民の多数が受信料廃止に反対したスイスとの違いとは?

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NHKホームページ上の「受信料の窓口」より

 NHKと契約を結ばず、受信料を払わない世帯に割増金を課す――。2月26日、政府はそんな放送法改正案を閣議決定し、物議をかもしている。本当にNHKは日本国民から徴収した受信料で支えるべき「公共放送」なのか? 著書『NHK解体新書』(WAC)などで知られる早稲田大学教授の有馬哲夫氏が、スイスで行われた公共放送の受信料をめぐる国民投票を引き合いに出しながらNHKの矛盾を暴く!

 NHKは受信料を徴収する理由として「公共放送」だからだという。例えば、NHKのホームページの「よくある質問集」の中の「民放は無料なのに、なぜNHKは受信料をとるのか」には次のような説明がある。

 公共放送NHKは、“いつでも、どこでも、誰にでも、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝える”ことを基本的な役割として担っています。そして、その運営財源が受信料です。NHKが、特定の勢力、団体の意向に左右されない公正で質の高い番組や、視聴率にとらわれずに社会的に不可欠な教育・福祉番組をお届けできるのも、テレビをお備えのすべての方に公平に負担していただく受信料によって財政面での自主性が保障されているからです。

 NHKは「公共放送」だから、受信料を払ってくれというのだが、その「公共放送」がどういうものだかわからない。上記の説明でわかるだろうか。

 わからないのは自分の頭が悪いからだと思う方に安心してもらいたいのは、総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会」で議論をしているお偉い先生もわからないということだ。

 令和2年(2020年)11月9日に総務省内会議室で行われた検討会にて、委員の新美育文氏はこう述べている。

 この事務局のまとめた方向性について私も賛成しますが、その前に少し根本的なことを考える必要があろうかと思います。

 それは何かというと、これまでは公共放送だから契約締結義務がありますということで、公共放送がまず前提にあって、いろいろな義務が議論されてきましたけれども、逆に、契約を締結することを強制するという効果をもたらす公共放送とは何ぞやということをきちんと議論しないといけないのではないか。国民の支持を得るためにはそれが避けられないのではないかと思います。

 論理を詰めていく、あるいは構造的にシステムとしてつくり上げていくことは大事ですが、そうした点で整合性がとれたとしても、それを国民がしぶしぶであったとしても納得できる、あるいは正当性を持つことが一番大事なことだと思います。

 新聞協会もおっしゃっていましたけれども、適切な業務範囲という議論の中に、そうした契約締結義務を妥当なものとする根拠が認められるかどうかがその究極にあると思います。公共放送の公共とは何ぞやということをきちんと議論しないと、全ての、これまでの緻密に構築してきた議論が基礎を失ってしまうのではないかと思います。

 これを読むと「ああ、偉い先生もやっぱり同じことを考えているんだ。そうだよNHKはまずどこが公共放送なのか説明しなければ、受信料だけ払えといったって無理な話だ」と思う。

 驚くのは、この会議では、受信料不払い者から割増金を取ることも話されていたことだ。それなら、新美氏もこんな割増金を取ることなんかに反対してくれればいいのにと思うのだが、ご存じのようにそうはならなかった。

 新美氏のために弁護しておくと、ひとりの委員が言ったところで、NHKの説明員が全体の流れを作り、それを総務省が阿吽の呼吸で結論としてしまうので、彼にはどうにもならない。これは会議録を読めばわかる。こうやって、密室で、民意とは関係なく、学識者の意見とは関係なく、受信料の値上げや割増罰則金制度が決められるのだ。

 総務省の受信料に関する検討会や審議会の会議録をいろいろ読んでみたが、委員は常に「公共放送とは何か」をNHKの説明員に訊いていた。ということは、誰もNHKの「公共放送」についての説明に納得していないということだ。ということは、NHKは「公共放送」ではないということになるのではないか。実は受信料徴収合憲判決を出した最高裁判所も「公共放送」をきちんと定義していない。

 一方、NHKが「公共放送」ではないという証拠は山ほど見つかる。「特定の勢力、団体の意向に左右されない公正で質の高い番組」を作ろうとしていないことは、政権幹部に突っ込んだ質問をするキャスターを降板させていることからも明らかだ。

 『ニュースウォッチ9』の有馬嘉男キャスターは去年の日本学術会議の問題で菅総理に食い下がり、今年3月限りで降板になった。『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターは14年7月、集団的自衛権をめぐる放送で、当時の菅官房長官にインタビューで鋭く問題点を問いただしたあと、しばらくして契約打ち切りになった。

 その前には、『ニュースウォッチ9』のキャスターを務めた大越健介氏もいる。彼の降板も予想外のものだったが、特定秘密保護法や原発再稼働について番組内で意見を述べ、特に安全保障や外交面で安倍政権に対して批判的だった。

 彼らはみな国民の知る権利に応えるべく、国民に代わって問題点を明らかにしようとしただけだ。それなのに、このような気骨あるジャーナリストのクビを総務大臣の走狗になっている「NHK官僚」がご機嫌取りのために差し出すということが連綿と行われてきた。

 圧力による番組の放送延期なども多い。例えば、NHKは昨年4月のかんぽ生命保険の不適切販売の実態をスクープしたが、日本郵政から圧力がかかって続編の放送を止めている。その後、この問題がマスコミの騒ぎになったので3カ月後に放送した。報道によれば、総務省のお偉いさんが日本郵政に天下っていて、NHKに圧力をかけたのだという。前に述べたように、総務省は電波監理を行っているので、そこの元幹部はNHKに圧力をかけられる。

 今年に入ってからは、『NHKスペシャル』の特番「令和未来会議 どうする? 何のため? 今こそ問う 東京オリンピック・パラリンピック」の放送予定日は五輪開会半年前にあたる1月24日だったのだが、延期されてしまった。これは討論番組だったのだが、五輪をやるべきでないという意見が多く表明されるのではないかと恐れ、NHK幹部がオリンピック組織委員会やその背後にいるオリンピックビジネス企業に忖度した結果だといわれている。

 NHKの経営委員には実業界のOBが多い。当然、古巣の企業の利害をNHKに持ち込んでくる。NHKの報道が公正中立なわけがない。

 NHKは政権に忖度し、経営委員が元いた企業に気を遣い、国民の知る権利に応えていない。顔が向いているのは国民にではなく、政府と大企業にだ。よく「特定の勢力、団体の意向に左右されない公正で質の高い番組」と言えたものだ。受信料に依存しているがゆえに政権や大企業から圧力を受けやすいのだ。

 歴史を振り返ると、NHKは、戦前戦中は国策遂行、軍国主義プロパガンダ機関だった。大本営発表で国民を騙していたときもラジオの聴取料はしっかりとっていた。

 占領中は、占領軍のプロパガンダ機関として、日本人に戦争に対する罪悪感を植え付けるために『真相はかうだ』や『真相箱』のようなウォーギルト・インフォメーション・プログラム(GHQの情報教育政策)を流していた。このときもNHKは食うや食わずの国民からラジオ聴取料をとっていた。

 占領が終わった後も、今しているのと同じことをしてきた。NHKが「公共放送」だったことなどあったのだろうか。

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