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「割増罰則金」導入も企むNHKは公共放送ではない! 国民の多数が受信料廃止に反対したスイスとの違いとは?

これこそ公共放送だ スイスの選択

 公共放送とは何かを深く考えさせてくれる出来事がスイスで起こった。公共放送の受信料の改廃をめぐる国民投票だ。ちなみに、私はこのときスイスのベルンに住んでいた。

 スイスがなぜ受信料改廃を国民投票にかけたのか、どんな議論をしたのか、どんな結果になったのか、なぜそのような結果になったのかは、やはり公共放送と受信料が問題になっている日本にとっても参考になる。そこで、スイスでの受信料をめぐる議論の発端、経過、結果をたどり、受信料で支えるべき公共放送とはどんなものかを考えるヒントにしたい。

 ことの発端はスイス連邦議会が14年9月26日に公共放送の受信料改正法案を可決したことだった。これは、それまでテレビやラジオを所有している人に負わせていた受信料支払い義務をタブレット端末、パソコン、携帯を所有している人にまで広げる法律だった。この結果、すべての世帯と企業に受信料が課されることになった。ご存じのように、これは日本でも問題になっていることだ。

 これに反発したのがスイス商工業連盟だ。その代表はこう述べた。

 受信機を所有しているかどうか、テレビやラジオ番組を視聴しているかどうか、それこそテレビやラジオを視聴できるような場所にいるかどうかなど、(この法案では)どうでもよいのだ。すべての人が強制的にこの税金を支払わされることになる。

 実は、スイス公共放送協会は世帯から受信料をとっていたが、企業からはほとんどとっていなかった。それがこの法律によって、付加価値税登録をしている企業が支払わなければならなくなった。だから、企業を代表してスイス商工業連盟が反対に立ち上がったのだ。

 スイスは直接民主制が発達した国である。政策をめぐって対立がある場合には、よく国民投票を行う。スイス商工業連盟もこの法案を国民投票にかけようと署名を集め、その数は必要数に達した。

 受信料廃止派は次のような主張をした。

1.受信料は「強制料金」でしかなく、個人の決定の自由を狭める。お金をメディアや本など何に使うかは個人が決めることだ。受信料が廃止されれば、すべての世帯は年間450フラン(約5万3000円)が自由に使えるようになり、スイスの国民経済に年間13億フラン(約1530億円)の購買力が生まれる。

2.スイス公共放送協会の国への依存度が極めて高い理由は、連邦が放送免許を交付し、受信料の額を設定し、同協会の役員会メンバーの一部を指名しているからだ。そのため、受信料が廃止されれば、スイス公共放送協会は今まで以上に自由になり、独立性が強化される。

3.受信料の廃止によりメディア市場の競争力は高まり、自由度も正当性も増すため、視聴者にとってメリットは大きいと賛成派は考える。競争が起きれば番組の質が向上し、番組も増え、料金が下がりやすくなるからだ。スイス公共放送協会が市場を独占している現在の状況では市場が歪み、受信料のわずか一部しか配分されていない民間放送局の負担は大きいという。

4.政府は技術の発展を十分考慮していない。デジタル時代の今、視聴者は放送ではなく、放送スケジュールに縛られず、好きな時間に好きなだけ見ることのできるNetflixのようなインターネット配信サービスを求めている。
(以上、スイス公共放送協会国際部のサイトの記事「受信料廃止案『ノー・ビラグ』とは何か? 可決されたらどうなる?」をもとに、わかりやすく書き直した。スイス政府の意見も同じ)

 これに対して、受信料維持を主張するスイス政府は次のように主張した。

1.今回の提案はメディアの多様性と意思形成を損なうものと考える。4つの公用語がある小国のスイスでは、放送局の財源が確保できるほど広告市場の規模は大きくないので、多くの番組は広告やスポンサー収入だけでは制作できない。そのため、受信料が廃止されれば、特に少数派の言語地域や周辺地域に影響が出る。

 公共サービスを実施する放送局には明確な任務がある。それは、経済的、政治的利益とは別に、全言語地域で自由な意思形成および文化的発展を促進することだ。しかし連邦政府の考えでは、受信料が廃止されればそれが実行できなくなり、番組の数や内容も乏しくなる。そして、経済的利益だけを追求する民間の資金提供者や外国企業の影響が高まり、多数派の好みに偏った番組が制作されるようになる。その結果、直接民主制を敷くスイスにとって不可欠なメディアの多様性が危機にさらされる。

2.また、今回の提案が可決されれば、経済や労働市場に非常にマイナスな影響が及ぶと連邦政府は懸念する。連邦政府の意見では、公共サービスを担う放送局やオーディオビジュアル分野の供給会社で数千人規模のリストラが行われ、広告費が今まで以上に外国に流れやすくなる。

3.今後も現在と同じようにさまざまな番組を視聴するには、一般世帯の大半は今よりも多くの料金を払わなくてはならなくなる。特にスポーツ系の有料テレビ放送は料金が高額で、すべての言語地域で利用できるわけではない。

 同協会は映画産業、音楽制作、スポーツイベントの重要なパートナーだ。こうしたイベントや制作は広告収入およびスポンサー収入だけではまかなえない。同協会は視聴覚障害者向けに字幕放送や手話放送を提供しているが、受信料がなくなれば、こうした放送も廃止される可能性がある。

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