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『チコちゃんに叱られる!』官公庁の縦割り行政を暗に批判!? ことごとく対照的な文科省VS農水省

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『チコちゃんに叱られる!』(NHK)

 3月19日放送『チコちゃんに叱られる!』(NHK)のゲストは、今回が2回目の登場となる高畑淳子と、VTR出演歴はあるもののゲストとしては初登場の小島よしおだ。

 チコちゃんは小島のことを親しみを込めて「ピーヤ」と呼んだが、服を着ている彼は海パン姿のときとあまりに雰囲気が違った。一瞬誰かわからないほど好青年に見えたのだ。小島といいMCの岡村隆史といい、結婚してからのほうがカッコ良く見えるのは素敵だと思う。

アバウトな文科省とブレない農水省

 この日最初のテーマは「野菜とくだものの違いってなに?」という疑問。小島は「野菜は土付近で採れ、果物は木の上で採れる」という説を主張したが、筆者もこれが正解だと思っていた。でも、どうやら違うらしい。チコちゃんが発表した答えは「バンラバラ」だった……って、これは一体なに?

 詳しく教えてくれるのは恵泉女子学園大学の藤田智教授だ。『趣味の園芸 やさいの時間』(Eテレ)でおなじみの先生である。この人のスーツ姿は初めて見たな……。

「野菜とくだものを分類する定義は、省庁や学会などによってバンラバラなんですよ」(藤田教授)

 謎の言葉「バンラバラ」とは、先生の発言そのままだったらしい。というわけで、各省庁の重責を担う方々と学会の権威による夢の企画が実現! 農林水産省生産局 園芸作物課長・佐藤紳さん、文部科学省政策課 資源室長・松本万里さん、園芸学者の藤田智教授の3人で、野菜 or くだもの について徹底討論してもらうのだ。リモート上で判断に迷う食材を見てもらい、“野菜”or“果物”の札を3人に挙げて判断していただく「野菜なのか? くだものなのか? サミット」の開催である。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)のBGMを使っているし、さながら「朝まで生野菜!」とでも呼びたくなる珍企画。メンバーも何気に凄い。当たり前のように文科省の人が出ているところなど、さすがNHKだ。

 さて、1つ目の食材は「いちご」である。これは野菜なのか、くだものなのか? ……って、聞くまでもなくこれはくだものと思うのだけど。しかし、事はそう簡単ではなかった。それぞれの回答は以下だ。

佐藤氏(農林水産省) 「イチゴは野菜です。農林水産省では1年で種撒き、植えつけから収穫までを終える作物、草本植物については野菜と分類しています。イチゴは草に実がついて、それが1年の間に収穫できるということで野菜です。甘さは関係ありません。どのような作り方になるのか、そこがポイントですね」

 農林水産省では、草になるもので1年以内に種撒きから収穫まで終わるものを野菜、2年以上栽培して果実を食べるものをくだものとしている。いや、今さらイチゴを野菜と言われても……。じゃあ、もし親から「もっと野菜食べなさい!」と言われたら、たくさんイチゴを食べればいいということ? 野菜orくだものを判断する基準そのものは、確かにわかりやすいけれども。続いて、文科省の回答も見てみよう。

松本氏(文部科学省) 「文部科学省ではイチゴはくだものです。食品成分表の中では草になる食物は野菜に分類しているんですけど、通常の食生活においてくだもので食べられているもの、これについてはくだものに分類させていただいております」

 食品成分表は管理栄養士が見ることも多いため、わかりやすいように食生活に合わせ分類しているらしい。つまり、一般人の感覚に近いのが文科省だ。

藤田教授(園芸学者) 「園芸的にはイチゴは野菜に分類されます。食用にする草本性植物のことを野菜と言うわけです」

 イチゴに関しては、3者の中で文科省の判断だけが違った。それぞれの定義が見事に違うのは驚きである。イチゴ1つ取っても、確かにバンラバラだった。

 続いての食材はスイカ。「西瓜」と書くくらいだし、野菜に分類する人が多いはずだ。しかし、佐藤氏は「野菜」、松本氏は「果物」、藤田教授は「野菜」と、またしてもバンラバラな判定がくだった。しかも、イチゴと同様に今回も文科省のみ違う判定なのだ。

佐藤氏(農林水産省) 「スイカも1年で収穫される草本作物です。どんなに甘くても、断固野菜です! メロンも野菜です」
松本氏(文部科学省) 「スイカも先ほどのイチゴと一緒ですね。食事で出てくる際にデザートとして出てくる頻度が多いので、やはりくだものに分類させていただいております」

 文科省のアバウトさに笑う。「デザートとして食べられているからくだものです」なんて、もはや循環論法だ。実態(食生活)に合わせる文科省は文系脳で、農水省は理系脳と喩えることもできる。確かに、筆者を含め多くの人は文科省の判定を支持すると思う。でも、そうなるとデザートとしてはほぼ食べられていないアボガドの扱いはどうなる? 国民感情に委ね過ぎると、言い分が少し苦しくなるのだ。

 いや、何も文科省ばかりツッコみたいのではない。だって、農水省もこんなことを言い出したのだから。

佐藤氏(農林水産省) 「確かにイチゴ、スイカ、メロン、間違いなく野菜なんですけれども、デザートとして食べられるということですし、こういったものは “果実的野菜”という風に分類させていただくこともあります」

 果実的野菜って、そんな合体単語を持ち出されても……。それを言うなら、スッと「果実」で済ませればいいのに。農水省は農水省で、色々苦しくなってきた。

 最後に取り上げる食材は「パイナップル」だ。これに関しては、佐藤氏「果物」、松本氏「果物」、藤田教授「果物」と全員がくだもの判定を下した……と思いきや、藤田教授は「果物」札の横に「△」の札を重ねるのだ。

藤田教授(園芸学者) 「本来、木にできるものがくだものですが、パイナップルは草本植物ですから野菜とも言えるので、『△』も出してみました」
佐藤氏(農林水産省) 「確かに、パイナップルは木になるわけじゃなくて草になるわけですが、2年以上栽培されるということで、これはくだものということになります」

 農水省の基準にブレがなくていい。定義であって定義と呼びづらい文科省とは対照的である。つまり、こういうことだ。

農林水産省……種を蒔いて1年で収穫できる草本植物は野菜、それ以外はくだもの。
文部科学省……食生活でくだものとして食べるものはくだもの。
園芸学……食用にする草本植物は野菜。

 今回のサミット企画は秀逸だったと思う。野菜とくだものに焦点を当てながら、日本の官公庁の縦割りを暗に批判しているのだから。こうも基準がバンラバラなのは、紛れもなく縦割り行政の弊害である。それにしても、なぜ分類の定義を統一しないのだろう? 

藤田 「やっぱり、目的が違うから分類が分かれる。こういうことだと私は思っております」

 どういうことか? 各省庁の目的をまとめると以下になる。

文部科学省……食品別の栄養成分情報の提供が目的。通常の食生活を意識して分類していくことを重要視している。
農林水産省……生産面に着目しているので、“毎年変えられるもの”と“ずっと変えられないもの”の特性を踏まえ、政策を考える必要がある。だから、1年で収穫できるかどうか? を基準に分類する。

 他にも、厚生労働省は食品安全を、総務省は消費動向の把握を重視して分類する。各省庁の政策によって目的は様々なのだ。

「曖昧という言葉はそれぞれ分類されている方に失礼なんですけれども、やはり曖昧のままでいいのではないかと私は思います」(藤田教授)

「分類の目的が違うのだから、定義もバラバラでいい」という結論はごもっともだ。異議なし。だとすると今後、クイズ番組で「野菜orくだもの」を当てさせる問題は成立しなくなりそうだな……。

 そういえば、かつてアメリカでは「トマトは野菜か、くだものか?」で最高裁まで争われたと聞いたことがある。今振り返ると、不毛の極みだ。

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