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ファンのアンケートがお笑い芸人のメンタルを追いこむ… 元芸人が解説する売れっ子が抱えるネタと精神のジレンマ

悲壮感が漂う笑い芸人の精神的病

 仕事のプレッシャーからくるストレスで精神的な病気を患う事は、一般社会でもよく聞く話だ。

 しかしなぜお笑い芸人の精神疾患には、悲壮感が漂うのか。少々前置きが長くなったが今回はこの点を元芸人目線で分析していく。本稿は、芸能界と一般社会の両方を経験した僕の考察である。

 ずばり芸能という職業の煌びやかさと、精神疾患にまとわりつく負のイメージのギャップにより悲壮感が漂うのだ。

 俳優、歌手、タレントなど、様々なカテゴリーの人々が交わる芸能界で、芸人の役割は”笑いの創造”である。テンションを上げて明るく振舞い、ふざけたり、面白いコメントや動作を考えて動く。

 そんな楽しそうに見える職業の人間がまさか精神的に追い込まれているとは誰も予想しない。視聴者だけでなく、共演者も、なんなら本人すら気が付かないケースもある。

 かが屋の加賀さんが体調不良で休養したのも、人気が出るにつれて仕事が忙しくなり、周りからの期待に応える為に、プレッシャーに打ち勝とうとするが、心のバランスが保てずに病んでしまったのだと思う。

 プレッシャーの中でも要因になりがちなのは、「ネタを披露する」ということだ。

 歌手は良い曲が出来ると、ライブやイベントでその曲を歌い続ける。何故ならお客さんがその曲を求めて聞きたがっているからだ。

 しかしお笑いの場合真逆である。

 ひとつのいいネタが出来たとしても、そのネタをやり続けると視聴者に飽きられてしまう。最初は笑ってくれたとしても、二度三度と見ていくうちに「またこのネタ?」「ひとつしかネタが無いの?」などネガティブな反応に変化していく。

 これは、ライブ会場で配られるアンケ—トでもよく見る文言である。

 特に、メディアの仕事で忙しくなるとネタを作るペースが落ちるので、忙しい芸人ほど、これを言われてしまう。僕も以前アンケートで「このネタを気に入ってるみたいですが、飽きました」と書かれたことがあった。僕自身も同じネタをやり過ぎているという自覚があったので、違うネタをやりたかったのだが、作る時間がないというジレンマを抱えていた。

 つまり面白くて精巧なネタを作ろうが、そのネタには賞味期限があり、永久に使う事は出来ない。芸人を続ける限り、常に新しい笑いを追求し、もっと面白いネタを作り続けなければいけないというプレッシャーと戦い続けるのだ。

 飽きられてしまえば仕事が無くなる、そういった恐怖も常に隣り合わせである。

 ネタは芸人自身の作品であり、それを目の前で直接評価される事も、病んでしまう原因にひとつになりうると僕は思う。

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