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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.630

山田孝之、齊藤工、竹中直人の異能監督が共作! 秘密や嘘が、退屈な日常を塗り替える『ゾッキ』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

山田孝之、齊藤工、竹中直人の異能監督が共作! 秘密や嘘が、退屈な日常を塗り替える『ゾッキ』の画像1
大橋裕之原作コミックの映画化『ゾッキ』。吉岡里帆は冒頭を飾る「秘密」に登場。

 秘すれば花。室町時代の能作者・世阿弥は『風姿花伝』でそう語った。観客に思いもよらぬ感動を与えることこそが、“花”だそうだ。能のたしなみはなくとも、心の中に秘密のタネを播くことで、ドキドキ感を育てることはできるかもしれない。劇場アニメ『音楽』(20)の原作者として人気の漫画家・大橋裕之の初期短編集を映画化した『ゾッキ』が現在公開中だ。市井の人々が持つ秘密や嘘が、退屈な日常に彩りや艶(つや)を与えるシャレた連作コメディとなっている。

 本作を企画したのは竹中直人。舞台公演中に、客演する前野朋哉の楽屋にあった大橋裕之の漫画『ゾッキ』を借りて読んだところ、「これは映画化すべき」と直感したそうだ。これまでにも監督作『無能の人』(91)や『さよならCOLAR』(05)が高く評価された竹中が、山田孝之、齊藤工に声を掛け、それぞれ『ゾッキ』の中からお気に入りのエピソードを監督するという共作スタイルで長編映画化している。

 齊藤工は『blank13』(18)や『コンプライアンス』(20)で、監督としてキレのある演出を披露してきた。山田孝之は『デイアントナイト』(19)などでプロデューサーを経験しているが、監督としては本作がデビュー作となる。3人の個性派俳優がコラボした監督作として話題性は充分だが、はたして映画としての出来はどうなのか? 3人の監督たちの個性のバラバラさがうまく活き、思いのほか楽しめる作品に仕上がっている。

 原作はエピソードごとに主人公が異なるが、大橋裕之の故郷・愛知県蒲郡市をロケ地とし、さらに脚本家の倉持裕がバラバラだったストーリーをいくつかのエピソードにまとめ、他のエピソードとリンクするように脚色している。ロバート・アルトマン監督の群像劇『ショート・カッツ』(93)をかなりユル~くした感じ。それぞれ無関係な人生を歩んでいたキャラクターたちが、人生のある一瞬だけ微妙にクロスし、そのことでその後の人生が変わったり、変わらなかったりする。そんないい加減さも、意外と心地よい。

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