日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 『神カル』新型コロナに打ち勝つ“唯一の道”
発売数日で重版の注目度!新型コロナ医療ドキュメント小説『臨床の砦』

『神カル』夏川草介氏が医療の最前線から掲げる、新型コロナに打ち勝つ“唯一の道”

絶望的な惨状の中で見出す希望とは?

「医療か経済かという二分法的思考では、新型コロナウィルスの危機を克服することは難しい。それが私のいたった結論です。私は医療の専門家であり経済のことは詳しくありません。ただ経済を優先させるべきと主張する方々のなかで、医療の現状を理解している人はほとんどいません。だからこそ、秘匿性をはぎ取って、各現場のことを互いに知ることがまず何より大事なのではないかと。『臨床の砦』は、医療現場の惨状をドラスティックに伝えるために書いたものでは決してありません。ただただ現場では起きていること、現場にいる人たちのことを知ってほしい。その一念で書くことを決めました」(夏川氏)

『臨床の砦』では、患者の治療に命がけであたりながらも、家族や自分自身の安全を顧みながら苦悩・葛藤する医師たちの姿が描かれる。未知の病気の前で誰もが無力さに飲み込まれている。完璧な医療従事者はひとりもいない。唯一の希望は、負けるかもしれないと分かっていても耐えること。そして、最後まで人を思いやることだ。

「秘匿性や対立が蔓延する医療現場、そして社会であっても、責任を放棄せず、誰かを思いやることができるからこそ場が和み、状況が少しずつでも良い方向に進んでいく。私は、コロナ禍の危機的状況がどうにか持ちこたえられているのは、そういう人たちがいるからだと現場をみながら痛感しています。耐えるのはつらいでしょう。ただ、みんな耐えている。そして一緒に耐えきることこそ、新型コロナウィルスに打ち勝つ唯一の道だと。そういうメッセージが小説を通じて伝わればとてもうれしいです」(夏川氏)

『臨床の砦』
出版社 : 小学館 価格:1650円(税込) 発売中  https://www.shogakukan.co.jp/purchase/paper/books/09386611

夏川草介(なつかわ・そうすけ)
1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県の病院にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は2010年本屋大賞第2位に。『神様のカルテ』シリーズは累計300万部突破のベストセラーになった。

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2021/05/02 08:00
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