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インド映画『WAR ウォー‼』爆発×ダンス×男の因縁! 後先を考えない“起転転転転結”の痛快脚本

うなるインドマネーで観客をブン殴る

インド映画『WAR ウォー‼』爆発×ダンス×男の因縁! 後先を考えない起転転転転結の痛快脚本の画像2
リティク・ローシャン、齢47歳。袴田吉彦と同い年です(Getty Imagesより)

 ロケ地もインド、ヨーロッパ、北極圏と文字通りワールドワイド。北極圏の地でスーパーカーを爆走させるなど、うなるインド・マネーでブン殴ってくる系のゴージャスな見せ場が満載だ(この北極カーチェイスやバイクチェイスなど、完全に『ワイスピ』や『ミッション・インポッシブル』シリーズで見たやつだが、面白いからOKである)。

 そして潔いほど後先を考えていない脚本も素晴らしい。見ている今この瞬間に観客が「何だって!?」と前のめりになることだけを考えた、ハッタリ特化のストーリーテリングが炸裂。けっこう反則技に近い「実は、あの時……」のちゃぶ台返しを連発し、急展開のみで映画を引っ張る。起承転結でいえば、本作の構成は起転転(以下、151分「転」が続く)転転結だ。脚本の学校で出したら怒られるかもしれないが、たとえば「飛行機から飛行機に飛び移る」などのムチャクチャだけど面白い「画」の力で強引な展開が許せてしまう。最初から最後まで前のめりで、ツッコミを入れる暇がない。まさに近距離パワー型映画であり、映画の魔法を体感できること請け合いである。

 そして何よりはタイガー・シュロフである。登場シーンから、いきなり麻薬組織の取引場に窓を突き破って入ってきて、1カットで組織を壊滅させる勢いの良さ。本作はインドの大スターであるリティク・ローシャンとのW主演だが、アクション的には間違いなくタイガーのほうが目立っている(逆にセクシーなシーンではリティックが目立っている。素朴な疑問なんですが、どうやったら、あんなイイ男に産まれるんですか?)。

 ダンスシーンでも「サマーソルトキックで太鼓を叩く」など、派手な動きで目立ちまくりだ。見終わったあと、必ずやタイガーのファンになっているだろう。そして思うはずだ。このスターの魅力は国を動かせる、タイガー外交という言葉ができてもおかしくない、と。

 コロナ禍によって、我々は望まぬステイホームを強いられている。望んで家にいるならよいが、強制的に家にいろといわれると、どうしても気分が暗くなるものだ。予定が吹き飛んで暇な人も多いだろう。暗い気分で暇をしていると、ますます気分が暗くなる。本作『WAR ウォー‼』は、そんな暗い気分を間違いなく吹き飛ばしてくれるだろう。

 151分間、絶え間なく度肝を抜かれて「なにっ!?」とビックリし続けて、浮世のあれこれを忘れられるはずだ。あるいはいつの日かタイガー外交という言葉できた時に、「ああ、それの元ネタは知ってるよ」と国際情勢に詳しいパーソンになりたい方、押さえておいて損はないだろう。151分の娯楽であり、ひょっとしたら勉強にもなるかもしれない。まさに連休中に見るのに相応しい1本だ。

▽作品詳細
映画『WAR ウォー‼』
DVD & Blu-ray発売中
監督:シッダールト・アーナンド
キャスト:リティク・ローシャン、タイガー・シュロフ

加藤よしき(ライター)

ライター。1986年生まれ。「Real sound」「tayorini」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。

Twitter:@DAITOTETSUGEN

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かとうよしき

最終更新:2021/05/05 12:00
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