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「農業の会社化」が進行中ー深刻な若者の農業離れ… 個人が農業で新規参入するハードルが上がっている?

文=鷲尾香一(わしお・こういち)

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写真/GettyImagesより

 農業の衰退が言われて久しい。農林水産省の調査によると、2019年の新規就農者は前年比微増となったものの、若い世代の新規就農者は大きく減少した。

 2019年の新規就農者は5万 5870 人と前年比0.1%増加した。

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 このうち新規自営農業就農者は4万2740人(前年比横ばい)、新規雇用就農者は9940人(同1.2%増)、新規参入者は3200 人(同1.2%減)だった。

 まず、新規自営農業就農者とは、農家の家族で農業に従事するようになった者を指し、新規雇用就農者とは農業法人等に雇用者となった者。一方、新規雇用就農者は、農業用の土地や資金を自ら調達し新たに農業経営を開始した者を指す。

 つまり、新規就農者の多くは、農家の家族で農業に就いた者であり、横ばい傾向を辿っている。これに対して、自ら農業に乗り出す新規参入者は14年の3660人をピークに減少傾向を辿っており、農業法人等の雇用者が増加傾向を辿っていることになる。

 農業の再生に向け、政府が農業法人の設立要件を緩和するなどの取り組みを行ったことで、確かに新規就農者数は微増ながら増加傾向にある。一方で、その多くは自らが経営者として農業に新規参入するのではなく、雇用者として農業に従事するものになっている。

 つまり、資金力を持った企業などが農業法人等を通じて農業に参入する一方で、個人が農業に新規参入するのは難しくなっており、「農業従事者が会社員化」しているのだ。

 さらに大きな課題は、新規就農者のうち49歳以下が大きく減少していることだ。2019年の新規就農者のうち49歳以下は1万8540人と前年比3.9%減少している。

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 このうち新規自営農業就農者は9180人(前年比7.0%減)、新規雇用就農者は7090人(同0.4%増)、新規参入者は2270人(同3.8%減)だった。

 49歳以下の年齢層では、新規就農者の中核をなす農家の家族で農業に従事する新規自営農業就農者の減少傾向が続いており、農業法人等の雇用者は微増となっているものの、自らが経営者として農業に新規参入する者は減少している。

 この傾向を詳細に見ると、65歳以上の新規就農者数は横ばい傾向にあり、60~64歳が減少傾向を強め、50~59歳が大きく増加、40~49歳が増加している。しかし、20~29歳、30~39歳の若い世代では減少傾向が続いている。

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 農家の家族で農業に就く新規自営農業就農者では、40~59歳で増加傾向が続いており、60歳以降では減少傾向が続いている。これは、社会人生活を送り、定年が近づくにつれて農家を継ぐ動きの表れと見ることができ、反面、60歳を超えると農業から引退する動きの表れと見て取れる。

 深刻なのは、20~39歳の若い世代で農家を継ぐ者の減少傾向が強まっていることだ。2~29歳では2016年の3420人から2019年には1500人に、30~39歳では3620人から2590人に減少している。

 特徴的なのは、農業法人等の雇用者となった新規雇用就農者の動きだ。増加しているのは、20~29歳と60歳以降に集中している。60歳以降は、継ぐ農家を持たない会社員などが定年を控え、あるいは定年後の職場として農業法人を選択している可能性が強い。その一方で、20~29歳では就職難の中で、農業法人等を就職先として選択した可能性がある。

 このように新規就農者は、微増傾向を辿ってはいるものの、その中身を見ると、就職難を要因として20~29歳の若い世代が、就職先として農業法人等を選択するケースと、定年を控え、あるいは定年を迎えた60歳以上は農家を継ぐ、あるいは高齢者の雇用に積極的な農業法人等を就職先として選択している姿が透けて見える。

 この点では、厚労省が進めている「生活困窮者自立支援制度における農業分野等との連携強化」が機能している面もあろう。

 半面、働き盛りと言われる30、40歳代では農業離れの傾向を強めており、農業が若者や高齢者にとって、避難所的な就職先なっている可能性がある。

 活力ある農業を取り戻すためには、若い世代を中心に多くの世代が農業に新規歳入できるような制度改革を続けていくことが肝要だ。

鷲尾香一(わしお・こういち)

鷲尾香一(わしお・こういち)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」ほかで執筆中。

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Twitter:@tohrusuzuki

最終更新:2021/05/11 20:00
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