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若林正恭と田村淳、“骨組み”を組み立て続ける2人の本音のような言葉

田村淳「まぁ、その……オール惰性なのかな」

 2人の会話は続く。MCとして番組の「骨組み」を作る自分たちの仕事については、スタッフの間にも理解者が少ないのではないか? そんな若林の先の問いかけに、淳はひとまず「そうなのよ」と受け止めた。「それって孤独じゃなかったですか?」と若林がさらに問うと、淳は次のように答えた。

「でもね、たくさんいるよりかはいいと思った。ターゲットっていうか、的がわかりやすかったから。大事にしたほうがいい番組ってあるじゃない。終わっても涙が出ない番組ってあったもんね、やっぱり。(番組が)終わって涙するってことは、やっぱり向き合ったし、もっと続けたかったし、いろんな思いが錯綜して泣くんだなと思ったの。泣けないってことは、うん、まぁ、その……オール惰性なのかな」

「(番組を)やってるときは惰性の感覚なんてまるでないよ。全部一生懸命やってるつもりなんだけど、『番組が終わります』って聞いたときに、自分がどれだけ(その番組に)ベットしてたかっていう答え合わせがバンッと出てくるんだと思う。辞めたくない、もっと続けたかったって泣くのがホントにいい番組っていうか。自分もベットできてたっていう」

 多少ぶっちゃけたようなニュアンスで、笑いを交えながらなされた淳の応答。「オール惰性」という強めの言葉を出した直後に、「やってるときは惰性の感覚なんてまるでないよ」とひと言添える話の流れには、これまで一緒に仕事をしてきた人へのフォローも感じられる。その後もトーク内で逸脱と自己修復を繰り返す彼の話の運びには、器用ではない相方を選んだ若手時代の彼がスタッフから送られたという助言、「淳はフォワードとキーパー両方やらないといけないんだよ」との言葉が重なる。

 さて、淳の話を聞きながら若林はテーブルに肘をついてうつむく。淳の言葉の中に、自身の今の心境と深く交わる何かがあったかのような面持ちだ。そして改めて問う。

「でも淳さんは、この番組、俺の骨組み理解してくれてないなってわかりながらも、自分的にはやり切ったなって気持ちでおさめてく感じですか?」

 この「骨組み」という言葉を改めて用いた質問に、淳は別の比喩を交えながら答えた。

「あのね、覚醒剤の人が、見つかったら、逮捕されたらホッとしたって話あるじゃん。(番組が)終わってホッとするって感覚があるんだよね。骨組みは自分なりに作ったけど、でも、どうしてもスタッフさんのこの演出理解できないんだよなっていうのを、やっぱり演者だから『今週行きません』とかはできないじゃない。スタッフさんも当然毎週がんばってんのよ。俺も毎週がんばってるけど、どうしても歯車が合わない。『番組が終了です』って言葉でホッとするって感覚が……俺、覚醒剤やったことないんだけど(笑)」 

 さて、「骨組み」というキーワードをそれこそ骨組みのように通しながら展開した2人のトーク。常軌からの逸脱を好む芸人でありながら、番組の進行役を任されることの多い2人の本音のような言葉が、その即興で組み立てられたトークの骨組みの上に積み上がっていく。淳の話をしばしば神妙な顔つきで聞いていた若林は、最終的に、自身の胸の内のようなものをこう吐露した。

「だれも理解してくれないだろうけど、骨組みだけはやったって、最後までやりたいって思ってて……っていう話を、誰もいままで聞いてくれる人いなかったから、さっきからずっと泣きそうなんですよね」

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