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まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品

文=MARUOSA(マルオサ)

まるでかた焼きそばのサラダ! 立川で100年以上続く福来軒の懐かしくて新しい逸品の画像1
(以下、写真/小嶋真理)

 シュプリームのコレクションに楽曲を提供し、海外の有名音楽フェスに出演するなど、国内外で評価されてきた“エクストリーム・ミュージシャン”のMARUOSA。他方で“かた焼きそば研究家”としての顔も持ち、近年は『新・日本男児と中居』(日本テレビ)や『たけしのニッポンのミカタ!』(テレビ東京系)といった地上波のテレビ番組にしばしば登場して注目を集めている。そんな彼が、驚愕の絶品・珍品に光を当てながら、かた焼きそばの奥深き哲学に迫る!

 「老舗」という言葉がある。

 テレビや雑誌などのグルメ特集でよく使われ……いや、使われすぎて、もはやなんの違和感も感じない。「あぁ、古くから営業してるんだなぁ」くらいにしか思わなくなってしまっていることに先日気づいた。みなさんも心当たりがないだろうか?

 前回紹介した平和軒も創業90年を超える老舗店だが、ただでさえ浮き沈みが激しい飲食業、さらに戦争やバブル崩壊という荒波を乗り越え、景色と同化するかのごとく粛々と営業を続けているなんて、よくよく考えてみれば常軌を逸してやしないか。派手で物珍しい演出も、それはそれで楽しく素晴らしいものがある。しかし、平和軒のような「普通にあり続けること」、すなわち「普遍的なもの」も、存在するのが当たり前すぎて見過ごしてしまうが、負けず劣らず素晴らしいものなのだ。

 そんなことを考えていると、某店の存在が頭に浮かんだ。平和軒同様、いくつもの荒波を乗り越えてきた老舗店だが、コロナウイルスという未知の激流にも屈することなく暖簾を守り続けているのだろうか。

 いてもたってもいられず、JR中央線に乗って立川駅へ。目的地はそこから南へ10分ほど歩いたところ、街の喧騒から離れた諏訪神社のお膝元にひっそりと存在する。その名も「福来軒」。

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コロナ禍でもビクともしない堂々たる店構え。さすがである。

 創業は、なんと大正元年(1912年)。

 日本国内における中華料理のひも史を紐解いてみると、大体は浅草や神保町、中華街(横浜・長崎・神戸)などの店が登場するが、ここ福来軒は創業当初から立川で営業していたそうだ。屋台からスタートし、立川駅北口の第一デパート(2012年に閉店・解体)に店舗を構えて順調な滑り出しに思えたが、日本鉄道史に残る大事故「立川駅タンク車衝突事故」(1964年)に巻き込まれ、火災により焼失。その後、跡地に建てられた第一デパートの5階に新たにオープンし、約30年前に現在の場所へ移転した。

 きっと上記の出来事以外にもさまざまな苦労があったことだろう。そのたびに立ち上がり、今や4つの元号を生き抜いている姿に思わず目頭が熱くなる。

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店内に飾られている写真は昭和25年(1950年)頃の福来軒。第一デパート時代の店舗である。

 30年程経過しているとはいえ、清潔感をきちんと保っている店内。造りとしては中華料理店というより喫茶店のような雰囲気で、上品な落ち着きを醸し出している。常に気を配っている丁寧な店員さんの動きには人柄が感じられ、とても好印象だ。

 ここでメニューを確認。

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メニューにはいわゆる町中華のオーソドックスな品々が並ぶが、かた焼きそばはどこに……?

 福来軒でのかた焼きそばは「揚げ焼きそば」。この表記は時折見かけるが、固さの表現に重きに置くか、揚げているという工程に重きを置くか……だけの違いで、特に深い意味はないように思う。おそらく各店主のフィーリングだろう。地域性もあり、関西では「フライメン」、名古屋では「バリそば」と表記されていることが多い。中には「焼きそば」自体がかた焼きそばという店舗も存在する。

 憶測の域を出ないが、アメリカで誕生したかた焼きそばの当時の表記が「Chow mein」(現在では通常の「中華料理の焼きそば」として認識されている)だったために、当時のアメリカ式中華料理を修行した者にとっては「焼きそば=かた焼きそば」という認識だった。その後、中華料理の焼きそばと混同してしまうのを避けるために、それぞれの名称を名乗るようになったのではないだろうか……。 せっかくの揚げ麺がふやけてしまうので、早速食べることにしよう。

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揚げ焼きそばは860円。

 具材はキャベツ、ニンジン、もやし、ニラ、タマネギ、キクラゲ、タケノコ、えのき、しめじ、枝豆、コーン、プチトマト、豚肉、イカ、エビ。揚げ麺はライトめの中細麺、塩ベースの少なめあんかけ。老舗というと極めてシンプルな姿を想像しがちだが、なんともハイカラな、それでいてノスタルジック。あまりほかではお目にかかれないかた焼きそばである。

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こんなルックスの一品だが、味はいかがだろうか?

 あんかけ自体は薄味の見た目だが、胡椒とお酢でくっきり輪郭を整えているので、物足りなさは微塵も感じない。具材は盛りだくさんながらスッキリした味わいのものが多く、まるでかた焼きそばのサラダを食べているようだ。 この心地よい、風が吹き抜けるような解放感。懐かしさと新鮮さが同居する不思議な感覚。噛むたびにバレアリックの足音が聴こえてくるようだ。

 コ 

 コンビニなどで販売されているバリバリサラダの類いも、画期的で美味しい商品ではある。しかし、これを食べてしまうと、やはりというか当たり前だが福来軒に軍配が上がる。かた焼きそばと聞けば、どうしてもヘビーで高カロリーだし食べ切れない……と敬遠している方に、是非一度食べてもらいたい麗しの一品だ。

 お会計時は飴玉のおまけ付きなのも嬉しいホスピタリティ。すっかり暗闇に包まれた立川の住宅街。年甲斐もなく慎重に選んだパインアメを舐めながら、来るときよりも足取り軽く帰路に着いた。

 創業109年の福来軒、きっとこれからも老舗の看板にあぐらをかくことなく、焦らず地道にコツコツ営業し続けていくのだろう。
 年齢を重ねるのも、悪くない。

<INFO>
・福来軒
住所:東京都立川市柴崎町2-18-7
営業時間:12:00~16:00、17:00~20:00

定休日:不定休

〈連載「かた焼きそばのフィロソフィー」の過去回〉
第1回「海老天ベンツも潜む圧倒的な情報量の“揚げ日本そば”スタイル」
https://www.cyzo.com/2021/03/post_269657_entry.html
第2回「中野坂上にも“夢と魔法の王国”があった! 豚レバーとピリ辛餡が刺激的な『ミッキー』のかた焼きそば」
https://www.cyzo.com/2021/03/post_271051_entry.html
第3回「椎茸・ザ ・ボンバーの一点突破! “映え”だけじゃない極端かた焼きそばの滋味と享楽」
https://www.cyzo.com/2021/03/post_272438_entry.html
第4回「インド、アメリカ、中国が同盟を結んだ! フォークで食べる常識破りのジャンクかた焼きそば」
https://www.cyzo.com/2021/04/post_274730_entry.html
第5回「創業90年の町中華で味わう極上“アンビエント”かた焼きそばの宇宙と無常観」
https://www.cyzo.com/2021/05/post_278955_entry.html

MARUOSA(マルオサ)

MARUOSA(マルオサ)

1980年、大阪生まれ、東京在住。エクストリーム・ミュージシャンとして、これまでに20カ国以上でライブを行い、世界3大メディア・アート・フェスのひとつ「ソナー」(スペイン)、約28万人も訪れる欧州最大級の「ロスキレ・フェススティバル」(デンマーク)、世界最大の音楽見本市「SXSW」(アメリカ)などに出演。かた焼きそば研究家としてテレビ・ラジオ出演やコラム執筆といった活動も行う。

Twitter:@maruosa

【maruosa.com】

最終更新:2021/06/15 19:00

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