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国税庁調査で日本の脱税額増加が判明!貧困ビジネスグループ摘発や香港を使った事例なども

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 国税庁は「2020年度の査察の概要」を発表した。1件当たりの脱税額は総額分で8000万円、告発分で8300万円となり、2019年度より増加、告発率は73.5%で2008度以来の高水準となった。

 査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及するために、質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施するもの。2020年度は83件を検察庁に告発、告発した査察事案の脱税総額は69億円だった。

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 事案別では、消費税事案を18件告発した。また、国庫金の詐取ともいえる消費税不正受還付事案は9件を告発した。この不正受還付額は3億8400万円だった。具体的な事例では、国内の金地金取扱業者に金地金を販売(課税取引)していた会社が、香港法人に販売したと仮装する方法により輸出売上(免税取引)を計上し、不正に消費税の還付を受け、または免れていたケースがあった。

 無申告事案では、13件を告発した。このうち、単純無申告ほ脱犯は7件だった。故意の申告書不提出である単純無申告ほ脱犯は、悪質性の高い無申告事案。具体的な事案では、異業種交流会や節税セミナーなどと称して集めた複数の顧客に対し脱税を持ち掛け、顧客の脱税を指南することにより、多額の報酬を得ていた会社を告発した。同社は、法人税および消費税の申告義務を認識しながら確定申告を一切せずに納税を免れていた。脱税の指南を受けていた顧客2社については、架空経費を計上し、多額の法人税等を免れたとして、すでに2019年度に告発している。

 国際事案では、消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案や海外に不正資金を隠すなど過去5年で最多の27件を告発した。具体的な事案では、国内で中古自転車を仕入れ、アフリカに輸出していた在留外国人が、消費税の輸出免税制度を悪用し、実際の取引に基づかない、過大な金額の輸出免税売上および仕入税額控除を故意に計上し、不正に消費税の還付を受けたとして告発した。

 また、国内外からダイヤモンド等を仕入れ、宝飾品として製造・加工し、国内の宝飾品販売会社に販売する会社が、香港法人に対する架空の原価(材料費)を計上するとともに、香港に開設された同法人名義預金口座に不正資金を送金し、留保するなどの方法により法人税を免れていた。

 社会的波及効果の高い事案としては、生活困窮者が受給した生活保護費を収入源とする、いわゆる貧困ビジネスを行っていたグループ法人を告発した。この4社のグループ法人は、ホームレスやネットカフェ難民等の生活困窮者に宿泊施設を提供し、受給した生活保護費から家賃収入を得ていたが、現金で回収した家賃収入の一部を除外するなどして法人税を免れていた。

 こうした脱税によって得た不正資金の隠匿場所では、「寝室ベッド下の収納スペースの中」「クローゼット内のスーツケースの中」「個人および関係法人名義で契約した貸金庫の中」「ウォークインクローゼット内のバッグの中」に現金を隠していた事例などがあった。

 2020年度中に一審判決が言い渡された件数は87件、そのうち86件に有罪判決が出され、実刑判決が6人に出された。実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独に係るもので懲役2年6カ月、他の犯罪と併合されたものが懲役3年だった。

 この中で、暗号資産取引により得た利益を申告から除外し、所得税を免れていたとして全国初の告発となった暗号資産事案に有罪判決が出された。この事案は、ビットコイン等の暗号資産の取引を行い、多額の利益を得ていたにも係わらず、同取引での利益を申告から除外する方法により所得税を免れていた。所得税法違反の罪で、懲役1年(執行猶予3年)および罰金1800万円の判決を受けた。

 また、法人2社の脱税を助け容易にした協力者に対して、法人税法違反の幇助犯(査察事件単独・再犯者)として全国初の実刑判決が出された。過去にも本件と同種の法人税法違反幇助により罰金刑および執行猶予付きの懲役刑の有罪判決を受け、同執行猶予期間中に本件犯行に及んだことで、罰金800万円のほか、懲役10カ月の実刑判決を受けた。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2021/06/26 12:25
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