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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.641

“愛に生きる女”高岡早紀が連続殺人鬼を怪演!! 劇場版『リカ 自称28歳の純愛モンスター』

恋愛感情にも似た、追い追われる関係

愛に生きる女高岡早紀が連続殺人鬼を怪演!! 劇場版『リカ 自称28歳の純愛モンスター』の画像2
リカのことを調べていくうちに、奥山刑事は「リカに会いたい」と願うようになる。

 リカの犯罪歴をプロファイリングしていくうちに、奥山刑事はリカの不幸な生い立ちを知ることになる。TV版『リカ』の前日談として、2021年3月に放映された『リカ リバース』(フジテレビ系)では、リカの少女時代が描かれた。両親と双子の姉を10代の頃に失ったリカは、家庭の愛情に飢えている。奥山刑事もまた、シングルマザーに育てられ、温かい家族の記憶を持たずに育った。孤独な者同士のハートがお互いを惹きつけ合う。

 江戸川乱歩原作、三島由紀夫脚本、深作欣二監督による犯罪映画『黒蜥蜴』(68)の明智小五郎(木村功)と女盗賊・黒蜥蜴(美輪明宏)のように、追い追われる関係にある奥山刑事とリカも心が共鳴することに。「リカに会いたい」と願う奥山刑事の妄想と、就眠中のリカの夢の世界が重なり合い、ふたりは運命的な出会いを果たす。

「正義も善も関係ないわ。必要なのは愛、それだけ」

 リカの言葉にうなずく奥山刑事。ふたりは幻想の世界で、熱いキスを交わし合う。

 高岡と市原の振り切った演技とご都合主義全開な展開に、思わず笑いがこみ上げてくる。日本映画では珍しいホラーコメディとしても楽しめる本作だが、恋愛はバカになりきった者が勝ちだ。モラルや常識に縛られている限り、恋愛という名の甘い果実を味わうことはできない。リカは恐ろしい殺人鬼であると同時に、運命の恋人との出会いを信じているピュアな存在でもある。精神年齢は28歳よりも、もっと低い。夢見る少女のままだ。そして、リカは純粋すぎるがゆえに、一般社会からはみ出した純愛モンスターとなってしまった。幸せになりたい。その一心で、リカは殺人を重ねていく。

 高岡早紀は新人時代から、『バタアシ金魚』(90)や『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(94)などでインパクトのあるキャラクターを演じてきた。いまだにソフト化されていないため、「幻の映画」扱いされている百田尚樹原作の復讐サスペンス『モンスター』(13)では整形手術を重ね、初恋の男性を追い求めるヒロインを熱演した。高岡早紀は、愛に生きる女、恋愛モンスター役を当たり役にしてきた女優だ。だが、ただ美しいだけ、恐ろしいだけでなく、哀しいシンパシーを抱かせるところが、女優・高岡早紀の生命線にもなっている。

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